「遂にゆうちょも無料ではやれなくなった」
苦境にあえぐ銀行の細かいコストカット

 冒頭に述べたゆうちょ銀行の硬貨入金有料化は、スーパーなどのセルフレジへの大量の硬貨投入の原因としてやり玉に挙げられてもいる。しかし実のところ、これは以前から、既に多くの銀行で移行済みだ。行員側の受け止め方は、「遂にゆうちょも無料ではやれなくなったのだろう」が主流と見込む。

 そうした細かいサービスの見直しは、個人向け・事業者向けを問わず、随時実施され続けている。三菱UFJ銀行では、預金残高や系列クレジットカード保有などの取引内容に応じてコンビニATMなどの無料利用回数が動く“ステージ制”を昨年6月に廃止した。以後は、給与・年金の受け取りや通帳レスだけを優遇対象とし、昨年7月からは新規口座開設者に年1200円(税別)の口座維持手数料を課している。

 三井住友銀行も、コンビニATMなどの無料利用回数基準のうち、預かり資産の残高を30万円から500万円に引き上げる変更を、昨年7月に実施している。

 みずほ銀行では、住宅ローンなどの申込時に求める本人確認書類や不動産関連書類などを、審査結果、つまりはローン利用の可否を問わず返却しないこととしている。読者各位もよく知るように、こうした書類は、自治体窓口での申請を経て有償交付されるものが珍しくない。このため、申込者がローン利用を謝絶されれば、よその銀行に提出するため返却してほしいという意向が、漏れなくもたらされる。そうした返却のための事務対応自体や、返却まで書類を一時保管する格納場所を節約することが主目的と思われる。

銀行が来店予約を求める理由
建て前はコロナ、実態は便乗コストカット?

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 その他の細かい変更点として、大手銀行の都市部店舗を中心とした面談の事前予約化も挙げられる。最近の行員の雇用形態・職制は、いわゆる総合職・一般職だけでなく、地域を区切った「エリア総合職」などのほか、派遣・パート・アルバイトなど多種多様だ。こうした職制を複雑化しさまざまな雇用形態を導入する目的は、導入時の耳当たりのよい美辞麗句とは裏腹に、もちろん人件費の圧縮にある。

 店舗で顧客と面談する際には、会議室や応接室などの場所だけでなく、人(行員)も必要だ。予約で事前調整ができれば、時間給行員の配置などを含め、これらを調整できる。つまるところ、飲食店などのアルバイトのシフト調整と何ら変わらないのだ。一部の銀行では、それを新型コロナの感染拡大防止のためとしていることが腹立たしい。国内の初感染から2年以上が経過してからの移行には、「今さら」感が拭えず、便乗コストカットの印象を受ける。