渡辺弁護士によると、コロナ禍で大学のキャンパスで学生が減る中、カルト宗教はSNSを通じて学生たちに接触する活動を強化した。

 例えばツイッターで「#春から、○○大」という新入生らしきハッシュタグを見つけると、信者の現役大学生やOBらが、接触を試みる。「いきなり宗教に勧誘するのではなく、正体を徹底して隠しフレンドリーなコメントで近づいていくのです」(渡辺弁護士)

 この春はSNSに加え、キャンパスでの勧誘が再び活発化すると渡辺弁護士は見ている。毎年、ターゲットになるのは主に新入学生だが、今春は、コロナ禍でキャンパスライフが送れず、リアルの大学生活がやっと始まる新入生気分の2、3年生もいるからだ。

 渡辺弁護士は、「重ねて強調しますが、初対面で正体を見抜くことはできません」と前置きした上で、知っておいた方がいい勧誘の手口や団体の特徴を挙げる。

▽キャンパス内に一人でいる学生を狙うことが圧倒的に多い。その場所や人目があるかないかは問わない。

▽信者らは一人だったり複数だったりさまざま。複数でも最初から一緒にいるとは限らない。警戒されないよう、信者同士が「久しぶり!」とターゲットに定めた学生のそばで偶然出会ったように装い、その流れで声をかけてくるなど手が込んでいる。

▽フットサルやバレーボールなどのスポーツ。最近注目されているSDGsやボランティア活動。ゴスペルなどのサークルに偽装している。さらに、実際にスポーツの大会に出場したり、ボランティア活動の実績を作るなど、気づかれないための正体隠しが徹底している。

▽やたら好感度の高い男性、女性が多く「いい人」だと感じてしまう。

▽集まりに参加すると、社会人が登場する。学生の目には魅力的な仕事や立場に映る「すごい人」たちが多い。

▽団体の責任者、イベントの主催者があいまい

 などである。あくまで目立つ例で、これらに該当しなければ安心ということではない。

「さわやかで好感度の高い人ばかりの集まりって、冷静に考えたらおかしいですよね。さらに、集まりに参加すると魅力的な仕事や立場の社会人が現れる。そんな団体が、そうそうあるはずありません。ただ、新入生は好感度にだまされてついていってしまったり、社会人を『すごい人たち』と信じ込んでしまいがちなのです」(渡辺弁護士)

 勧誘されても、その日はついていかない。学生課などに相談する。団体のことをネットなどで調べる、などマニュアル的な対策はあるが、冷静に実行できる新入生はなかなかいないだろう。

 実際、全国の大学が学生へのカルト宗教の勧誘に危機感を強めている。