Qさんが最優先にすべきは
治療に専念し、無理をしないこと

 2つのご質問に回答するまえに、まずはひと言申し上げます。ご相談文を読む限りでは、Qさんが無収入になることに対する不安と焦りが感じられてなりません。治療期間の目途がはっきりしていないので、不安感もさらに増しているのではと拝察します。

 ただ、筆者の今までの経験(Qさんのような病気を患った方のご相談)を基にお伝えしたいのは、焦る気持ちは分かるものの、絶対に無理をしてはいけないということです。無理をして病気をさらに悪化させてしまうと家族にも負担が増すうえ、医療費等も余計にかかってしまうことになりかねません。

 無理なく働くことができるようになるまで、治療に専念することが、Qさんにとっては最も大切なことだと認識していただきたいと思います。今まで頑張って蓄えてきた金融資産があるのですから、治療に専念されても家計(収支)がピンチになることはありません。

 実際にQさんが無収入になった場合の家計収支を確認してみましょう。

Qさんが退職し、夫が役職定年を迎えるまで
いくら貯金ができる?

 まずは現在の世帯収入を確認します。Qさん夫婦は共に48歳。子どもは1人で12歳です。毎月の手取収入はQさんが35万円、夫が50万円の合計85万円。ボーナスの年間手取額は夫150万円、Qさん120万円と書かれているので、合計270万円。年間の世帯収入は1290万円になります。

 Qさんが仕事を退職した場合、540万円の収入減となり、夫の収入750万円だけになります。約4割強の収入減となるため、Qさんが不安になるのは致し方ないといえます。しかし、世帯収入が多い割には支出がコントロールされており、かなり抑えられています。そのため、過度に不安になる必要はないでしょう。

 相談文に記載されている項目を合計すると、支出は月30万8000円、年間369万6000円になります。ボーナスからのまとまった支出は記載がないものの、予備費等が発生する可能性もあることから、年間支出は420万円とします。またQさんの治療費に関しては、「健康保険と加入している保険でカバーできる」と書かれているので、年間支出は420万円で試算は続けていきます。

 Qさんは退職後、無収入のため夫の扶養に入ることになります。したがって、健康保険料等でQさん自身が費用を負担する必要はありません。手続き等は忘れないで行うようにしましょう。

 夫の収入750万円、支出は420万円ですから差額の330万円が黒字となり、貯蓄に回すことができることになります。「330万円もためられる!」と驚くかもしれませんが、これはQさんがこれまで無理せず、身の丈にあった支出管理を行ってきた結果なのです。

 予備費の発生を約60万円計上しているので、子どもの成長と共に日常の生活費等が増えてもカバーできることでしょう。余裕をみてもう30万円を予備費用と考えて、年間300万円の貯蓄ができるとします。

 Qさん夫婦は48歳、夫は57歳で役職定年と書かれているので年間300万円の貯蓄は9年間行えます。合計で、2700万円の貯蓄ができることになります。