成長著しい中国では、自動車の保有台数が増加するに伴い、タイヤ市場も急成長を続けている。10%強のシェアを持つブリヂストンを筆頭に、ミシュラン、グッドイヤーなど、外資系タイヤメーカーが熾烈な戦いを繰り広げているのだ。

 そんな外資系タイヤメーカーがこぞって力を入れているのが、新車購入後のタイヤ交換需要を狙う「アフター市場」である。今回は、日系メーカーが一攫千金を狙う中国タイヤ市場の裏側を覗いてみよう。

 実は、タイヤメーカーにとって、「新車装着市場」はあまりおいしくない。自動車メーカーの新車開発に3年間付き合わされた上、損益ラインギリギリでタイヤを納入しなければならないからだ。

 それに比べて、タイヤを直接お客に売る「アフター市場」では、意外に大きな利益がとれる。新車装着市場とアフター市場の販売比率は、先進国の4:6に対し、中国ではまだ5:5。アフター市場は市場全体だけでなく、これからシェアの伸びも期待できるというわけだ。

 メーカーがタイヤを販売するチャネルは、「車メーカーのディーラー」「量販店」「タイヤ専業店(街中にある個人経営の店舗)」の3つがある。

 なかでも最もタイヤが売れているのが「タイヤ専業店」である。アフター市場の実に9割に上るタイヤが、全国に5万店ほどある「タイヤ専業店」で売られていると言われている。

小売の大半を占める個人経営店
代金回収リスクに悩むメーカーたち

 オートバックスなど、自動車部品の大手小売プレイヤーが力を持つ日本とは異なり、個人経営のタイヤ専業店が小売店舗の大半を占める中国では、タイヤメーカーの力が圧倒的に強い。

 しかし、だからと言って、中国に進出するタイヤメーカーが「濡れ手に粟」の商売をできるかと言えば、そうではない。

 現実はむしろ逆で、強いポジションにあるタイヤメーカーでも、タイヤ専業店との商売には躊躇してしまうことが多いという。それは、タイヤ専業店と直接商売すると、「代金回収が難しい」からだ。

 個人事業主が多いタイヤ専業店は、仕入れたタイヤが売れないと、仕入れ代金を払うことができない。しかも資金繰りが悪くなると、仕入れ代金を払うことなく、簡単に潰れてしまうので、タイヤメーカーは安心して取り引きができないのだ。