「悪い円安」対策は財政政策で
参議院選挙の追い風にもなる

 鈴木財務大臣が「悪い円安」に対して何を求めているのかは不明だが、日銀の政策転換を求めているのだとすると不適切だろう。

 問題は、消費者の実質購買力の低下と、特に低所得者の困窮、さらに企業の収益環境悪化なのだ。であれば、現在適切な政策は、財政赤字の拡大による需要追加だ。

 その場合、政府がお金の使い道を決めるいわゆる「財政出動」よりも、広くかつ公平に国民にお金が行き渡る減税ないし給付金が好ましい。

 国民が安心してお金を使うことができるような有効需要の追加は、恒久的な減税か、一時金ではなく継続性のある給付金のいずれかが好ましい。

 有望な選択肢は、消費税の減税か、基礎年金の全額国庫負担だろう。財務省は消費税率を下げることを好まないだろうから、基礎年金の全額国庫負担をお勧めしたい。年金保険料を負担している現役世代にとっては、直ちに手取り所得が増えるし、特に低所得者にとってその効果が大きい。

 また、国民年金において十分な金額を受け取れない低年金になっている高齢者に対して何らかの救済措置を組み合わせると、高齢な生活困窮者を救うことになる。

 与党にとって、参議院選挙を前にした政策として適切ではないか。

 国内の需要が、継続的な物価上昇に十分なレベルまで増加した場合、経済的な富裕者層を中心に増税すると、経済格差の解消策として有効に機能するはずだ。

 百歩譲って現下の円安の悪い点を強調する「悪い円安論」を主張してもいいが、その認識を、金融政策の転換にではなく、財政政策による経済対策に向けることを財務大臣、ひいては岸田政権に期待したい。

 現状は、長年続いたデフレから脱却できるか否かにとって重要な局面だ。