輸入物価の上昇とその影響
企業収益圧迫に消費者の購買力低下

 日米の金融政策の差に加えて、ロシアのウクライナ侵攻などを背景とするエネルギーや小麦などの国際価格上昇も、最大ではないが、円安要因の一つである。日本の貿易収支の悪化方向に作用するためだ。

 輸入材の価格上昇は、原材料価格の上昇を通じて企業にとっての「コスト高」要因となる。一方、製品価格を反映する消費者物価レベルまで価格転嫁は及んでいないので、マクロ的に見るとわが国の企業の収益は圧迫されている。

 3月の国内企業物価指数は前年同月比で9.5%の上昇だ。一方、同月の消費者物価指数(CPI、全国)の上昇率はまだ公表されていないが、2月のコアCPI(生鮮食品を除く総合指数)は0.6%にすぎない。4月以降、前年の携帯電話料金引き下げの効果が剥落するが、その効果を含めても2%程度の上昇と考えられる。

 また、消費者にとっても、既にガソリン価格や電気料金など生活に直結する物価が上昇し始めている。電気料金の場合、ウクライナ問題を背景とした原油・液化天然ガス(LNG)の価格上昇が反映するには3カ月程度のタイムラグがある。そのため、消費者レベルでの物価はこれからまだ上昇する公算が大きい。

 一方、賃金は大企業のいわゆる「春闘」の結果を見る限り、せいぜい2%程度の上昇と見込まれ、消費者の実質的な購買力は低下するとみられる。

 しかも、エネルギーや食品など使用量を減らすことが難しいものの価格が上昇するということは、それだけ他の財の購買力が減少することを意味する。従って、その他の財を販売している企業は、需要の減少にも直面しているということだ。