「金融政策をいじる議論は時期尚早」
十倉経団連会長は正しい

 こうした状況の中、経団連の十倉正和会長は、4月18日の定例記者会見で足元の円安について言及した。「金融政策をいじって為替をどうこう、という議論は時期尚早だ」と述べて、日銀は金融緩和を続けるべきだとの認識を示したのだ。

 企業が、一方で「コスト高」、他方で「需要減」に直面している状況で金融引き締めに向かうことは、企業にとって不利益であるし、設備投資の減少などを通じて景気にもマイナスの効果が懸念される。

 また、そもそも日銀は、消費者物価の上昇率がインフレ目標の2%を超えて「オーバーシュート」しても、しばらくは金融緩和を継続して、国民がマイルドなインフレを予想する状況をつくることを約束している。当面の円安と、賃金や国内生産財の販売価格の十分な上昇を伴わない状況での金融引き締めへの転換は、日銀自身が発するメッセージに対する信頼性の観点からも不適切だ。

 十倉氏の認識は適切だと言っていい。

 一方、鈴木俊一財務大臣は、4月15日の閣議後の記者会見で、足元の円安に対して「悪い円安」だとの認識を示した。価格転嫁が進まない中での企業収益への圧迫と消費者の購買力減少を意識したものだろうが、財務大臣としてはずいぶん踏み込んだ発言だ。

 共に「為替レートの急激な変動は好ましくない」という一般論では合意しつつも、財務大臣と日銀総裁の為替レートに対する見解が逆方向になることは異例だ。