「手切れ金」にも贈与税の納付義務
受贈者が行方不明の場合どうなる?

「愛人手当」であれ、「手切れ金」であれ、個人から個人への無償による財産授与は贈与である。したがって、1月1日~12月31日の1年間で贈与税の基礎控除額110万円を超える贈与には、その超過額に贈与税が課せられる。Aさんの彼女には、贈与税の申告・納税義務が生じるのだ。

 しかし、当の受贈者が行方不明になってしまい、贈与税の申告・納税が行われていないままだと、どうなるのか。実は、国税である贈与税や相続税には、相続税法第34条によって「連帯納付の義務等」というルールが定められている。贈与の場合、この「連帯納付義務」の責任は贈与者が負う

 つまり、Aさんは彼女に財産を与えた上、贈与税まで払う羽目となる。贈与税の申告・納税期限は贈与のあった翌年の2月1日~3月15日で、期限を過ぎれば延滞税や利子税も発生する。贈与税には6年の時効があるが、6年のうちに税務署から督促状が来れば、時効はリセットされる。

 連帯納付義務を負うAさんには、税務署から「連帯納付責任の通知」も届く。そんなものが父親とともに家業を営む我が家に届いたら、一大事である。おまけに、Aさんは妻帯者なのであった。妻に不倫や愛人への贈与が知れたら、慰謝料を請求され、離婚訴訟にもなりかねない。

「なんとしても、すぐさま彼女を見つけ出さなければ!」。Aさんは改めて思った。そして、専門家の力を借りることにしたのである。