ハーバード大教授が解説、プーチンと原爆投下決断のトルーマンの「決定的な差」Photo:Spencer Platt/gettyimages

ロシアのウクライナ侵攻は、民間人にも甚大な被害をもたらしている。事態が深刻化する中、懸念されるのはロシア軍が核使用に踏み切るリスクだ。ハーバードビジネススクールで「戦時下のリーダーシップ」について教えるジョセフ・バダラッコ教授は、原爆投下を決断したトルーマン米元大統領と、プーチン大統領のリーダーシップを比較し、分析する。プーチン大統領が核兵器を使用する恐れはあるのか。(聞き手/作家・コンサルタント 佐藤智恵)
※インタビューは2022年4月13日(日本時間)に実施。

>>前編から読む

ウクライナ・ゼレンスキー大統領に
今求められていること

佐藤智恵 バダラッコ教授はハーバードビジネススクールで戦時下のリーダーシップについて教えていますが、ウクライナのゼレンスキー大統領のリーダーシップをどのように評価しますか。

ジョセフ・バダラッコ 2月にロシアによるウクライナ侵攻が始まって以来、ゼレンスキー大統領は素晴らしいリーダーシップを発揮してきたと思います。「政治経験のない元コメディアンであるにもかかわらず、見事なリーダーシップを発揮している」と評する人もいますが、私は「元コメディアンだからこそ優れたリーダーシップを発揮できている」と見ています。

 特に卓越しているのが、コミュニケーション能力です。一流のコメディアンは頭の回転が速く、当意即妙で、聴衆の反応を見ながら即興で話の流れを変えていくことができます。ゼレンスキー大統領はコメディアン時代に身に付けた能力を最大限に生かし、ウクライナ国民や国際社会からの支持を得ることに成功していると思います。

 しかしここで問題なのは、ゼレンスキー大統領は本当の意味で「モラルリーダー(道徳的なリーダー)」なのかという点です。つまり、抗戦を続ければ続けるほど国民の命が犠牲になる。果たしてそれが人道的な行為といえるのか。これは非常に複雑な問題です。