民主的選挙で選ばれたユダヤ系のゼレンスキーを「ネオナチ」と考える人は、欧米にも日本にも、ほとんどいない。

 それでも「ネオナチ」と呼ぶプーチンの根拠は、何なのだろうか?

 要するに、ゼレンスキー政権が、「ルハンシク、ドネツクにおけるジェノサイドを続けているからネオナチ」というロジックだ。

 そしてロシア国民の多くが、「ジェノサイド話」を信じているため、「ゼレンスキーを倒さなければ」という話になる。

 ただ、「ゼレンスキーを倒すために首都キーウを攻撃する」ことを「やりすぎだ」と考えた国民も多かった。

 そのため、ウクライナ全土への攻撃が開始された2月24日以降、ロシアで大規模な反戦デモが起こったが、プーチン政権はこの動きを、武力を使って収束させている。

 いずれにせよ、プーチンの楽観的なシナリオは、実現しなかった。

 ロシア軍は、首都キーウを攻略できず、ゼレンスキー政権を倒すことができなかった。

 そこでプーチンは、「FSB第5局にだまされた」ことを認識し、粛清を行いつつ、立て直しに着手した。

 つまり、ロシア国民の多くが支持している、「ルガンスク、ドネツクを守る」という目標に当面集中することにしたのだ。