親の最晩年の資産運用は
「2世代運用」で考える

 母はそもそもリスクを取った運用が好きではない。しかし、彼女の最晩年の時期にあっても、取っていいリスクを取らずに資産を運用することは、一つには本人にとって「無駄」だし、彼女の資産を相続する子どもたちにとっても無駄が大きい。

 資産の運用は、もちろん資産の持ち主本人のライフプランを踏まえて行う必要があるのだが、加えて、資産の相続人の利益やリスク負担能力を考えないのだとすると非合理的だ。「高齢になったら、債券や預金の比率を増やす」という、よくあるファイナンシャル・プランニングは、運用を「2世代」で考えると合理的ではないことが多い。

 筆者の母の資産は、筆者の本に書いたように、内外の株式のインデックスファンドと、リスクを取りたくない金額については「個人向け国債変動金利型10年満期」で運用しようと考えた。

 ところが、母が口座を持っていた対面営業の窓口では十分運用管理費用が安い(年率でどんなに高くても0.3%未満)インデックスファンドの取り扱いがなかった。

 こうした場合、上場型投資信託(ETF)は証券会社なら取引が可能なはずなので、適当なものを使うといい。例えば、「MAXIS全世界株式(オールカントリー)上場投信」(コード番号2559)なら、上記の条件を十分満たす。もちろん、いったん買ったらお金が必要になるまでじっと持つ長期投資が基本だ。

 数年前に筆者と母と妹が選んだのはこのファンドではないが、ETFを複数選んだ。リスクを取りたくない金額については個人向け国債(変動10)を選んで、運用内容を決めた。

 なお、数年前に母と私の妹は、母の金融資産の取引に関するあれこれを妹が代理で行う「財産管理等委任契約」と、将来母が認知症になるなどで後見が必要になった場合に妹を後見人に指名する「任意後見契約」を合体した契約書を公証人役場で交わしている(手数料は数万円。将来、法定後見人を付けられるリスクを回避するための措置だ)。

 今のところ、任意後見に移行する必要性は乏しい。妹が、母の代理人として母の金融資産に関するあれこれを最期の時まで行っていくことになるだろう(一般的に、任意後見に移行しないケースが多いようだ。任意後見契約は、あくまでも法定後見の予防措置だ)。