加えて、前回も紹介したインターネット接続の課題だ。2016年に総務省の要請で始まったセキュリティー強化策「三層の対策」により、全国約1700ほとんどの自治体が、業務で使うパソコンから直接インターネットに接続できなくなった。一般企業では考えられないことだが、行政のDXを考える上では念頭に置くべき制約だ。

 三層の対策は、2020年に総務省から見直しが表明されているものの、現場では尾を引いている。過度なセキュリティー対策に加え、「インターネットは危険なもの」という認識から迷信も根強く残る。一部の自治体で「メールよりFAXのほうが安全」と言われるのもその一つだ。

自治体のDXを妨げる4つの要因

 一方で、自治体で働く人の多くが、私生活ではデジタルに慣れ親しんでいる。ギャップを知っているからこそ、庁内のパソコンを積極的に使おうとは思わない。すぐにフリーズするから最低限の機能を残して停止するし、会議は紙の資料で進んでいく。税金を使っている以上は最低限のスペックでというが、最低限のスペックとは時代とともに変化するものだ。民間企業の「普通」を享受することは、決してぜいたくではない。

 自治体のDXを妨げる要因をかなり抽象化すると、大きく以下の4つに分けられそうだ。

(1)前時代的なIT環境(予算や政策との兼ね合いもある)
(2)失敗を恐れる文化(4の原因となる場合もある)
(3)年功序列・終身雇用(長い下積みや人材流動性の低さ)
(4)意思決定と事業推進の遅さ(3による中間管理職層の厚さもその理由)

 これらは互いに影響し合っている。いくら(2)(3)(4)の改善に動いても、インターネット接続の課題を解決しない限り、技術的制約によって足止めをくらってしまう。民間から優秀なIT人材を採用しても、実力を発揮する以前の問題で去っていくということが起こり得るのだ。