出版社を辞めて「コールセンター支援」で起業、30カ国に海外展開できた理由コミュニケーションビジネスアヴェニューの柴山浩社長と、米パートナー企業の幹部たち

コールセンターのオムニチャネル化に早くから着目し、海外企業が開発した接客用ITツールの代理店販売などを行っている企業がある。従業員は150人中60人が海外人材で、2021年度の売上高は17億円と好調だ。だが、創業者はかつて出版社のIT部門に勤めており、英語は不得手だった。異色の転身の背景に何があったのか。(ルポライター 吉村克己)

「コールセンターのIT化」に着目
30カ国以上、160社が顧客に

「欧米企業が相手でも、提携交渉に際しては、お互いの売上高や従業員数は関係ありません。当社は小規模ですが、本気でコミットすれば相手もコミットしてくれます」。

 神奈川県横須賀市に本社を置くコミュニケーションビジネスアヴェニュー(以下、CBA)社長の柴山浩(56歳)は、自信を持って語る。

 同社はコールセンター関連のソフトウエアやソリューションを開発する海外企業とパートナー契約を結び、顧客企業への代理店販売などを行っている。

 コールセンターといえば、オペレーターと一般消費者が電話でやりとりするイメージが強いが、いまではチャットやSNSなど多様な連絡手段を用いるオムニチャネル化が進んでいる。顧客が残した音声やテキストデータはデータベース化されて、AI(人工知能)を活用した分析や顧客対応、販促利用などに応用されている。

 こうした最先端のソフトは海外ベンチャーが手がけたものが多く、日本で活用する際には日本語化などのローカライゼーションが必要になる。CBAはこうしたベンチャーと提携し、ローカライズを含めて日本企業への導入を行い、メンテナンスも担っている。

 クラウドサービスが主体なので、定期的なライセンス収入が全売り上げの7割を占め、安定した収益が得られている。

 取引がある海外企業は30カ国以上・160社に上り、中にはフォード・モーター、ヒューレット・パッカード、アメリカン・エキスプレスなどのグローバル企業も含まれる。国内の顧客企業には、コールセンター代行大手のベルシステム24などがある。

 コロナ禍でオンラインショッピングや非接触型の顧客対応ツールが伸びたこともあり、業績は絶好調だ。2020年度の売上高は9億円強だったが、21年度は17億円、さらに22年度は26億円に伸びる見込みだ。海外売上高比率は約40%に達する。

 従業員も150人中60人が海外人材である。米国、英国、南アフリカ、フィリピン、インドなど全世界にエンジニアを擁し、完全リモートで仕事を行っている。国内においても早くからリモートワークを徹底し、本社にはわずかな人数しかいない。

 世界の最先端分野で活躍する柴山だが、もともとは出版社のIT部門に勤めるエンジニアであり、英語も得意ではなかった。危機的なときには会社の口座には50万円程度しかなく、ギリギリの状態からはい上がった経験もある。

 その過程で何があったのか。