勃興する宇宙ビジネス市場に
突然現れた日本の“宇宙商社”
米モルガン・スタンレーの予測によれば、2016年に約3400億ドルだった世界の宇宙ビジネス市場規模は40年に1.1兆ドルに達するという。海外ではこの巨大市場を開拓すべく、ジェフ・ベゾス氏やイーロン・マスク氏ら有名経営者が次々と名乗りを上げている。日本でもこの流れに乗り、約50社の宇宙関連ベンチャーが生まれている。
そこにいきなり登場し、世界的な認知度を高めているのが“日本初の宇宙商社”を名乗るSpaceBDである。三井物産を退職後、17年にSpaceBDを創業した社長の永崎将利(41歳)は「日本には人も技術も市場もある。(宇宙ビジネスは)自動車に続く基幹産業になり得る」と力強く語る。
同社はまだ生まれて間もないが、JAXA(宇宙航空研究開発機構)からサービス事業者に選定されたり、NASA(米国空宇宙局)と組んだプロジェクトに参画したりと、その実力を認められている。
例えば、JAXAが国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」を初めて民間開放した18年には、小さな人工衛星を打ち出して軌道に乗せる「超小型衛星放出事業」のサービス事業者に選ばれた。
その後もJAXAからは、「きぼう」の船外利用サービスなどの民間委託を受けたほか、21年3月には「月周回軌道輸送サービスの概念検討業務」の実施企業に選定された。月への輸送サービスの構築などを目指す事業で、ゆくゆくは月ツアーが可能になるかもしれず、夢のあるビジネスだ。
海外に目を向けると、創業1年目に米国のパートナー企業(宇宙ベンチャーのNanoracks社)から依頼を受ける形で、NASAによる「地球低軌道商業化調査研究」に参加した。ISSの長期的活用や商用化に向けた研究プロジェクトで、これに加わったことでSpaceBDは海外での知名度が一躍上昇した。
「Nanoracks社は競合ですが、トップとは親しくしており、『今はパイを食い合うより、一緒に広げていこう』と協力し合っています」と永崎。
さまざまなプロジェクトを手掛けているSpaceBDだが、“宇宙商社”としての根幹をなす事業は一体何なのか。