「マナーがいい」なんて勘違い?!
日本人が世界の観光地を荒らしてきたのはなぜ?

「日本人のマナーは世界一」という話が触れ回られるようになったのは、実はこの20年程度の比較的新しい話である。それまでは観光地でバカ騒ぎをして、ゴミをポイ捨てするといえば、日本人の定番だったのだ。

 詳しくは、『バブル期日本人の「蛮行」に苦しんだハワイに見る観光業の未来』や『石垣島のラーメン店を「日本人お断り営業」に追い込んだ観光公害の深刻』をお読みいただきたいが、バブル期あたりまで日本人観光客は海外でも国内でも「マナー最悪」という評価だった。

 どこへ行っても大声でバカ騒ぎをして、地元住民を悩ました。教会や聖なる場所にもズカズカと土足で踏み入って、「ハイ、チーズ」とバシャバシャ写真を撮って、ゴミをポイ捨てして帰っていく。その傍若無人な振る舞いは、1987年の米タイムス誌に、「世界の観光地を荒らすバーバリアン(野蛮人)」なんて特集されるほどだった。

「それは今の中国人観光客と同じで急速な経済成長で、まだ国際感覚が追いついていなかったから」と言い訳をする人も多いが、そういう表面的な話ではなく、100年以上前から確認されている、伝統的な日本人の「旅先での振る舞い方」なのだ。

 例えば、1899年(明治32年)から1914年(大正3年)まで中国・長江に滞在していた帝国海軍・桂頼三は『長江十年:支那物語』のなかで、国際都市・上海を訪れた日本人たちが河原で「日本式花見」を催した時について触れている。

「飲む、食ふ、歌ふ、三昧や太鼓の楽隊入りの大騒ぎ、果ては踊る、舞ふ、跳る」という「乱痴気」や、「狂ひ廻はる有様」を見た外国人が珍しそうに眺めていて、「赤面の至り」だったと記述している。

 100年以上前から日本人は「旅の恥はかき捨て」と言わんばかりに観光地でハメを外してきたのだ。「久々の制限なしのGWでついはしゃいじゃった」とか「にわかキャンパーが増えている」という話ではなく、シンプルにこれが日本人の伝統的な観光地での立ち振る舞いなのだ。

 では、なぜこうなってしまうのか。