周りの目を過度に気にする日本人
解放されるとリミッター崩壊

 いろいろな考えがあるだろうが、筆者は「自分が周囲にどう見られるか」ということを過度に気にする日本人の国民性が関係しているような気がする。

 20年8月、同志社大学の研究チームが年齢や居住地が日本の縮図になるように1000人を選んで、なぜマスクを着けるのかということを調査をした。その結果、『感染が怖いからでも他の人を守るためでもなく「みんなが着けているから」』(日本経済新聞20年8月11日)ということが明らかになった。

 つまり、「あの人、みんなが着けているマスクをなぜしないんだ」と周囲の人に思われたくなくてマスクを着けているというのだ。

 このように「自分が周囲にどう見られているか」を過度に気にする日本人は、自分の生活圏ではあまり悪さをしない。家の前で、ゴミの不法投棄をしたり、バーベキューコンロを道路に放置すれば、「あそこの家はヤバい」と白い目で見られてしまう。「周囲の目」が抑止力になっているのだ。

 しかし、ひとたび生活圏から離れた海外や観光地に行くと、その抑止力が一気にパアになってしまう。周囲は知らない人ばかりだし、ヘタすれば二度と訪れないので、心おきなくゴミもポイ捨てできるし、バーベキューコンロの不法投棄もできる。酔っ払って人の家の前で吐くこともできる。

 普段は「周囲の目」を気にしながらビクビク生きているので、そこから解放されると反動で急に気が大きくなって、「旅の恥はかき捨て」のフィーバー状態に陥ってしまうのである。

 だから、観光地のゴミ問題で精神論を振りかざしたところで意味はない。日本人が自分の行動を律するのは、「周囲の目」を気にした時だけなので、「マナーが悪い」「モラルがない」と精神面を注意されたところで、馬の耳に念仏なのだ。