ノーベル物理学賞を
受賞した梶田隆章
埼玉県南西部に位置する人口35万の川越市。江戸時代には、川越藩8万石が領する城下町だった。川越高校は、1899年に設立された県第三尋常中学を前身とする伝統校だ。男子のみを貫いている。
ノーベル賞の受賞者を出していることが、川越高校の大きな自慢だ。東京大特別栄誉教授で東大宇宙線研究所所長を務めた梶田隆章(1959年3月生まれ)で、2015年に物理学賞を授与された。16年には川越高校内に顕彰碑がたてられた。
受賞理由は「ニュートリノに質量があることを示すニュートリノ振動の発見」で、「質量ゼロ」の前提で組み立てられた現代物理学の見直しを求め、物質や宇宙形成の謎に迫る成果と評価された。文化勲章も15年に受章した。
日本人のノーベル賞受賞は、梶田で24人目(米国籍の者も含む)だった。梶田は川越高校から埼玉大理学部物理学科に進学、東大大学院で理学博士となった。埼玉県内の高校出身者としては、初めてのノーベル賞受賞だ。現在の日本人のノーベル賞受賞者の累計は、28人にのぼる。
梶田は2020年10月から、日本学術会議会長を務めている。就任早々、当時の首相・菅義偉(秋田県立湯沢高校―法政大卒)が会員候補6人の任命をしなかった問題の対応に腐心している。
東大教授の加藤陽子(私立桜蔭高校―東大卒)、宇野重規(私立桐朋高校―東大卒)ら政治、歴史学など社会科学系の大学教授6人で、梶田は「任命すべきだ」と訴えたが、菅に続き首相の座に就いた岸田文雄(私立開成高校―早稲田大卒)も「決着済み」という態度を取っている。