ノーベル賞候補の
2人の卒業生
明治時代はまるで田舎で、立川村という田園地帯にすぎなかった。東京府はその立川村に1901年、府立第二中学を開校させた。これが、立川高校の前身だ。2022年4月からは、都立高校では唯一の創造理数科がスタートした。
まずは、ノーベル賞候補といわれているOGとOBを紹介しよう。
文学賞受賞の期待がかかっているのは、作家の多和田葉子だ。日本語と独語両方の言語で小説を書き、どちらも「一流」と認められている稀有な作家だ。作品は、英語、イタリア語、ロシア語、中国語など十数カ国の言語に翻訳されている。
芥川賞をはじめ10を超える文学賞を受賞している。その中にはドイツのシャミッソー文学賞やゲーテ・メダル賞もある。16年には、先駆的な作品を生み出す作家に贈られるドイツの文学賞、クライスト賞を受賞した。さらに18年11月には全米図書賞の翻訳文学部門で「献灯使」(英語版)が選ばれた。
立川高校(略称・立高)在学中、吹奏楽部ではクラリネットを吹き、文芸部では小説を自費出版し、選択授業では油絵を描くなど多才ぶりを発揮した。早稲田大でロシア文学を専攻、卒業後はドイツに渡りハンブルグ大学などで学んだ。
現在はベルリンに住む。22年2月からは朝日新聞朝刊で『白鶴亮翅』を連載している。
ノーベル文学賞といえば、十数年前から村上春樹(兵庫県立神戸高校卒)が候補といわれてきた。村上も早稲田大卒で、演劇を専修した。多和田は村上より11歳年下なので、二人が早稲田大のキャンパスですれ違うことはなかった。