中国が安保懸念を払拭しなければ
韓国は中立外交に戻らない

 THAADの追加配備、米韓同盟の強化はいずれも、北朝鮮の核ミサイル開発が文在寅政権の間に格段に進んだことから、韓国の安全保障にとって不可欠なこととなっている。

 中国が、北朝鮮の核ミサイル開発を阻止するのに協力してくれるならば、こうした問題への対応も違ってくるかもしれない。しかし、中国は北朝鮮の核ミサイル開発への制裁に反対し、北朝鮮を擁護する姿勢を鮮明にしている。

 中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹紙である環球時報は、尹錫悦大統領就任式当日の社説で、「韓国の以前の政権はこれ(米中バランス外交)に対して明確な認識を持って『肩入れ』を避け、複雑微妙なバランスを取るために努力してきた」「中国は、重大利益と関連した敏感な問題に対してはいかなる変更も譲歩もしない」「尹錫悦次期政権(当時)が最近発表した国政課題に『THAAD追加配備』が含まれていない点に注目する」として尹大統領の慎重な姿勢を求めた。

 しかし、韓国の安保体制の強化と米国接近を中国が阻止しようとするならば、中国は韓国を脅迫し、圧力をかけるのではなく、北朝鮮の核ミサイル開発を阻止する必要があることを認識する以外ないだろう。

北朝鮮の核ミサイル開発阻止で
中国は韓国に協力する意思はない

 中国は北朝鮮の核ミサイル開発阻止に向け、韓国と協力する姿勢は示していない。それは尹錫悦大統領の当選後の習近平国家主席との電話会談から読み取れる。

 3月25日、習近平国家主席は尹錫悦大統領と電話会談を行った。中国が次期韓国大統領と電話会談をするのは初めてだ。尹錫悦大統領は当時、既にバイデン米大統領、岸田文雄首相との電話会談を行っていた。尹錫悦大統領は米韓同盟の重要性を強調しており、日韓関係の修復に取り組む姿勢を示していた。韓国が日米と関係を強化しようとする時、中国が割って入ろうとすることは、文在寅政権下でも同様にあった。

 尹錫悦大統領は、習近平国家主席との電話会談の中で北朝鮮の完全な非核化実現に向けた両国の緊密な協力を要請した。特にその前日、北朝鮮はICBM(大陸間弾道ミサイル)を発射しており、朝鮮半島の緊張が高まった中での電話会談であった。