北朝鮮のICBM発射は、2017年11月29日の「火星15」発射以降1576日ぶりであり、18年4月の米朝首脳会談直前に宣言したモラトリアム(核実験とICBM発射の猶予)の約束を破ったものである。

 電話会談の中で尹錫悦大統領は、北朝鮮問題に対する中韓協力の重要性を特に強調し、ICBMの発射に対して「北朝鮮の深刻な挑発で朝鮮半島および域内の緊張が急激に高まり、国民の心配が強まっている」と強調した。

 これに対し習近平国家主席は、北朝鮮の重大な挑発には触れず、中韓両国の協力関係が北東アジア国際秩序の平和をもたらしたという点を強調し、現在の安定的な関係を維持していこうという立場のみを強調したようである。

 北朝鮮のICBM発射は、極めて重大な国連決議違反であり、中国としても北朝鮮の暴走阻止に協力して当然である。しかし、中国はこれをかばう姿勢を示した。

 かつて2017年に北朝鮮がICBM「火星15」を発射した際、国連安全保障理事会は制裁決議2397号を採択した。その中には、追加のICBMが発射された際には北朝鮮への石油供給に関する制裁を自動的に強化する条項が含まれていた。しかし、朝鮮日報によれば、北朝鮮に対する追加制裁に中国が反対するとの見方が有力視されているとのことである。

 いずれにせよ、尹錫悦大統領は、習近平国家主席との電話会談を通じ、北朝鮮問題に中国の役割は期待できないことを強く感じたのではないだろうか。

 電話会談に先立ち、中国外務省の汪文斌報道官は定例会見で、北朝鮮のICBM発射に対する米国の制裁について「現局面で状況をさらに悪化しかねない行為も望ましくない」と反対の立場を表明している。