司祭アリウスが
「イエスは人の子である」と説く
新約聖書が完成されていく頃のキリスト教の信者たちは、マタイが語るようなキリスト生誕の話を、素朴に受け止めていたのだと思います。
自分の村の伝説を信じるように。
そのとき一人の司祭が、次のような教説を語り始めました。
「神は唯一の存在である。
イエスは神そのものではなく、神のお造りになったもの、被造物である。
すなわち神とイエスは異質である。
神は神であり、イエスは人の子である」
表現を変えれば、ギリシャ神話の大神ゼウスが人間の少女を愛して赤ちゃんを生ませたようなもので、イエスはマリアという人間の女性から誕生した人間なのだ、という理論です。
しかし、だからといって、イエスの神性は否定していません。
神そのものではない、という考え方です。
この司祭はアレクサンドリア教会のアリウスです。
一般の信者にとって、母のマリアから生まれたイエスが神のように全人類を救ってくれるという考え方は、ごく自然に受け止められたと思います。
『哲学と宗教全史』では、哲学者、宗教家が熱く生きた3000年を、出没年付きカラー人物相関図・系図で紹介しました。
僕は系図が大好きなので、「対立」「友人」などの人間関係マップも盛り込んでみたのでぜひご覧いただけたらと思います。
(本原稿は、13万部突破のロングセラー、出口治明著『哲学と宗教全史』からの抜粋です)