県が配分した漁獲上限量を突破か
静岡市場出荷分だけで「40トン未報告」の情報

 また、3月23日配信の記事『アサリもマグロも…信用担保の「産地証明書」がただの“紙切れ”になる本末転倒』でも指摘した、クロマグロ漁獲の未報告問題も深刻だ。

 大間の民間出荷業者2社が昨年8月と9月に静岡市中央卸売市場に出荷した大間産マグロは、同市場関係者によるとおよそ60トンに上るが、その多くが県に漁獲報告をしていないマグロだった疑いが濃厚だ。大阪の卸業者2社を通じて、回転ずし大手のスシローなどが大量に購入していた。

 筆者が情報公開請求で入手した行政文書によると、青森県は検察庁とも協議しながら漁獲未報告など漁業法違反容疑で関係先に立ち入り検査や報告徴収を行っている。今年3月末には水産庁の職員らも加わった調査が大間の出荷業者に対して行われ、「静岡市場に出荷したものだけでも40トン近い未報告があったようだ」(大間の漁業関係者)とみられている。

 大間漁協に割り振られたクロマグロ漁獲量の上限は約260トンである。同じ町内にある奥戸(おこっぺ)漁協の分を足しても270トン足らずだ。

 一方、大間漁協が今年3月にまとめた2021年版の業務報告書を見ると、同年中のマグロ水揚げ量は209トン。4月から翌年3月までの漁獲年度と多少のずれはあるが、1~3月期の漁獲量は数トンなのでほぼ同じとみることができる。

 209トンなら漁獲上限内に十分収まっているかのようにみえるが、未報告の量によっては、実際は超過していた疑いがある。

 豊洲市場から入手した資料によると、2021年1~12月における大間漁協、奥戸漁協に所属する大間町の漁業者からのクロマグロ出荷は約196トンあった。これに大間から静岡市場への出荷60トンを加えると256トンになる。

 流通市場での重量は内臓などを取り除いたものなので、水産庁が推奨するように15%ほど加算してみると、漁獲量は290トン超に相当する。枠を余すどころか、大幅に超過していた可能性があることが分かる。

“仕組み化”されたヤミ漁獲
警察や税務当局も強い関心

 大間では、豊洲市場向けを含めて民間出荷業者による販売量が圧倒的に多い。漁協が水揚げ・計量を受け持ち、販売だけを業者に委託する「業者指定」が一般的だが、漁協の手を経由しないものもあって、これがヤミ漁獲の販路になっている。

 豊洲市場のほか、大阪、仙台、名古屋など全国の主要な卸売市場にも出荷され、大間町内で地元消費や宅配用などに販売されるマグロもある。そうした数量を加えれば、漁獲実績の過少報告が年間100トン規模あっても不思議はない。