しかも、ヤミ漁獲、漁獲の未報告は2021年に限ったことではない。漁獲規制導入前にヤミ漁獲を正規の漁獲として国や県に届け出ていれば、漁獲量の上限も今よりさらに大きく認められていた可能性もあるが、民間の出荷業者主導でその仕組みは作られてきたといわれ、県や漁協は実態を十分につかめず放置されていた。

築地市場ヤミ漁獲による出荷は以前からささやかれていた。築地市場(当時)など各地の中央卸売市場に出荷されていた可能性もある(写真は豊洲に移転する前の東京都・築地市場、2018年5月撮影)。 Photo by Hiroshi Kashihara

 毎年、漁獲量をごまかしていかなければ生活が成り立たないという悪循環に陥っている漁業者もいるようだ。過去に豊洲市場や前身の築地市場での初競りで、一番マグロを出荷した漁業者の中にすら、「ヤミ漁獲の常連」とささやかれている人がいる。

 年末の高値の時期であれば、大間産のマグロに1キロ1万円の値段が付くことも珍しくない。平均的な相場をその半分とみても1トンで500万円、100トンなら5億円である。過去にさかのぼって調査をすると、ごまかした漁獲量や所得は相当な規模になる。警察や税務当局が強い関心を寄せているといわれる理由も、こうした所得隠しにあるのだろう。

 青森県は漁協と民間出荷業者に漁獲データを示し、4月末を期限として報告漏れがないか調査協力を求めたという。昨年秋の大間漁協による出荷業者への報告漏れ調査の協力要請、年末の青森県立ち入り調査に続いて今回が3回目の調査と協力要請である。今度で本当に調査終結となればよいが、私はまだ懐疑的だ。