米国にとっての「子会社・日本」
社員である日本国民の処世術とは?

 さて、「日本は実質的に独立国ではない」などと言ってすねてもいいことは何もない。子会社の社員(筆者自身も含む日本国民)としては、親会社の意向や利害を考えた上で、身の処し方を決めることが現実的だ。国際情勢と円安の意味を考えるべきだろう。

 米国は、元々中国に対するサプライチェーンその他の依存が大きすぎる問題を抱えていた。いささか拙かったと思っていたはずだ。さらにウクライナ紛争が起こり、中国・ロシアの陣営に属さない産業のサプライチェーンを必要としている。

 子会社たる日本の産業の役割に対する米国の期待は、ここ数十年なかったくらいに高いだろう。現在の「円安」は、日本の産業に「有利なハンディキャップ」を与えてもいいと親会社たる米国が思っている証しではないか。

「円安」と「世界の分断」は、日本の産業にとって久しぶりのチャンスなのかもしれない。

日本が防衛力を増強するなら
米国が歓迎する「今」

 また、日本がいくらかでも実質的独立国に近づくためには、独自の防衛力を持つことが必要だろう。これまでは、日本が国防を強化することは、近隣諸国からも米国からも警戒されてきた。しかし、米国は今なら日本の防衛費の大幅増額を歓迎するだろう。多くの武器を米国から買うはずという損得勘定も働くはずだ。

 ウクライナの現状を見るに、将来日本に対する軍事的侵攻が行われた場合、米国は「まず、日本が戦え」という立場を取るに違いない。そのための防衛力増強は、「今なら」認められる可能性が小さくない。

 もちろん、防衛をどの程度自前でやるのか、国としての意思を決める必要がある。できるとすると「今」だろう。防衛費を「5年後に2%」などという「遅すぎる準備」の価値は低下する。予算を出し渋る官僚の手口に乗るのは愚かだ。

 もちろん、自前で強力な防衛力は持たないと決めるならそれも一つの方針だが、防衛に投資するなら早い方が有効だ。

 日本が米国の「子会社」的存在にすぎないことは、残念ながら否定しようのない事実だ。ただ、先般の大戦(第2次世界大戦)であまりに下手な負け方をしたためなので仕方がない。日本国民は「子会社の社員」であるとの自覚を持ちながら、しぶとく行動するといい。

 一方、子会社の社長として頂くには、安倍氏にも岸田氏にも不安を禁じ得ない。