「円安」を特集にした「週刊ダイヤモンド」の最新号(5月21日号)の15ページにある図を見てみよう。日銀は資産側に528兆円の国債と138兆円の貸出金、負債側に日銀券117兆円と当座預金542兆円をバランスシートに持つ。国債の平均利回りは0.206%だという。一方、当座預金の金利は−0.1〜0.1%だ。

 仮に、インフレ対策や円安対策で世間の金利を上げたいと日銀が考えた場合、当座預金に利息を付けることが現実的だが、そうすると、現在保有する国債の利回りを上回って、付利の幅によってはバランスシートが債務超過になる可能性がある。「これは大変だ、通貨の信認が崩壊する!」と騒ぎたがる人もいるのだが、この考えは幼稚で愚かだ。

 日銀は政府の不可欠な機能を担う組織であり、企業の世界でいうなら最重要な役割を担う子会社の一つだ。政府は日銀をつぶさない。政府は、日銀を増資してもいいだろうし、債務に保証を与えてもいいだろう。なぜなら、どのみち中央銀行は必要なので、ゼロから日銀を作り直すよりは、現在の延長線上の日銀を維持するほうが経済合理的だからだ。日銀に対しては、日本国政府に対するのとほぼ同等の信用があると考えていい。

 しばらくの間日銀は利上げしない方がいいと筆者は思うが、「出口」に向かう方法はあるし、それで日銀や通貨の信認が崩壊するわけではない。いかがわしい商品を売る金融マンや、極端な話が好きな評論家などの脅しにたじろぐ必要はない。政府は大切な子会社である日銀を守るし、その方法と合理性は存在する。

「親会社としての政府」を採点すると
明らかに不合格

 2012年の暮れから、親会社たる日本政府のコントロールの下、子会社・日銀は消費者物価指数の上昇率で「2%」のインフレ率を目指した。

 しかし、この目標がなかなか達成されなかったのは、多くの読者がご存じの通りだ。安倍政権下での二度にわたる消費税率引き上げなど、親会社である日本政府が財政赤字を出し渋って、市中(=民間経済)に十分お金が出回らなかったことが大きな原因だ。