安倍元首相は
優秀な「子会社の社長」だった

 実は、安倍氏は子会社のトップとして豊かな経験をお持ちだ。

「日銀は政府の子会社」と同様の、身もふたもない真実として「日本は実質的に米国の子会社だ」といえる。「子会社」を「属国」と言うともっと露骨だが、実質は同じだ。

 そして、安倍氏は優秀な「子会社の社長」だった。16年の米大統領選挙で大方の予想に反してドナルド・トランプ氏が当選した際に、何はともあれ彼に会いに行った姿などは、子会社の社長のかがみといえるものだった。

 日本の政治家も、米国の政治家でさえも言わない方が無難だが、いわゆる「日米地位協定」は、実質的に憲法を含む日本の全ての法律の上位にある。これを見直さずに日本国憲法を改正することは「子会社の定款の一部を書き替える」程度のことにすぎない。

 もっとも、子会社の社員たる日本国民にとっては、日本国憲法が「子会社の定款」であることが好都合な現実がある。親会社の命令であっても、定款からの逸脱はそれなりに難しいからだ。

 例えば、米国の要請があっても、憲法9条を変えないと日本国民は外国との戦争に赴くのは難しい。「押しつけてもらった」憲法には方便として重宝な面がある。少なくとも時間は稼げる。

 もっとも、子会社の経営者層は、親会社に気に入ってもらうためには、「解釈によって」自在に憲法から逸脱する方法を何度でも考えるかもしれない。そして、何よりも親会社は子会社に甘くないので完全に安心はできないのだが、現行憲法は当面役に立っている。