もう忘れている人も多いだろうが、昨年の自民党総裁選時、河野氏の家族が経営する自動車部品会社・日本端子が、中国共産党から「破格の待遇」を受けており、太陽光ビジネスの利権に関わっているのではないかという疑惑が持ち上がった。これを受けて、安全保障上にも重大な問題があるとして、河野氏は自民党総裁に相応しくないという批判がネットやSNSで相次いだ。実際にマスコミ記者が河野氏に事実関係を確認するような事態にもなった。

 そんな「日本端子疑惑」と、今回の「上海電力疑惑」のどこが似ているのかということは、後ほど説明をするとして、まずは筆者がモヤモヤするポイントからお話をしよう。

今更なぜ?「上海電力」のニュースは8年前の報道

 最も釈然としないのは、咲洲のメガソーラーに上海電力が関わることは8年前にそれなりに大きく報じられていることだ。

 例えば、朝日新聞大阪版では14年5月20日、経済面のトップで「黒船ソーラー続々 電力買い取り制度、追い風に 外資、咲洲で発電開始」という記事を掲載。上海電力が「大阪の設備工事業者と合弁会社を作り、共同運営する」としてご丁寧に、完成祝賀会に登壇した王運丹会長(当時)のコメントまで紹介している。

 橋下氏からの説明は一切なかったとしても、記者クラブはみんな知っていたわけだから、1社くらい山口氏のような「ステルス入札疑惑」を追及していてもよかっただろう。当時、橋下氏はマスコミとバチバチのバトルをしていたのだから格好の攻撃材料である。

 また、当時の市政マスコミの目が節穴だったとしても、上海電力の参入は大きく報道されているわけだから、市民からも「上海電力が関わるなんて聞いてないぞ!」「中国にインフラ事業を明け渡すな、国賊め!」なんてクレームが殺到して大騒ぎになっていてもおかしくない。

 しかし、山口氏が「疑惑」として指摘するまで、誰も「上海電力の途中参加」を問題視していなかった。なぜこんな奇妙なことが起きるのか。

 いろいろな解釈があるだろうが、8年前の太陽光ビジネスの環境を踏まえると、ひとつの可能性が浮かび上がる。それは、「当時の日本ではメガソーラー事業に中国企業が後乗りするようなことは、それほど珍しい話ではなかった」ということだ。

 例えば、先ほどの上海電力の発電開始を取り上げた「朝日新聞」の中にはこんな記述がある。

<外国資本によるメガソーラーは関東、東海、九州地方にも広がる。背景には、原発事故後の12年7月に始まった固定価格買い取り制度がある。メガソーラーで発電された電気は20年間、政府が決めた価格で電力会社に売ることができる>(同上)