健康保険証写真は合成です Photo by Yoko Suzuki

将来的にマイナンバーカードとの統合により廃止されることが検討されている健康保険証。そもそも、この健康保険証とはどのようなものなのだろうか。連載『医療費の裏ワザと落とし穴』の第241回では、GoToトラベルなどの観光振興策の再開が早ければ6月にも見込まれているなか、旅先で急に保険証を持たずに医療機関を受診せざるを得なくなった場合の対応を考えてみよう。(フリーライター 早川幸子)

マイナンバーカードと統合される健康保険証
その役割と「使い方」をあらためて知ろう

 マイナンバーカードとの統合により将来的な廃止が検討されていることがニュースになった健康保険証。そもそも、健康保険証とはどんな役割を持っているものなのだろうか?

 国民皆保険制度を取っている日本では、病気やケガがきっかけで貧困に陥ることを防ぐために、国籍に関係なく、この国で暮らすすべての人に、公的な医療保険(健康保険)に加入することを義務付けている。日頃から所得に応じた保険料を負担しておくことで、病気やケガをしたときに、少ない自己負担で必要な医療を受けられるようにしているのだ。

「健康保険被保険者証(健康保険証)」は、健康保険に加入していることの証明書だ。健康保険証を提示すると、日本全国どこでも、かかった医療費の一部を支払うだけで必要な医療が受けられるようになっている。これは、健康保険証が、医療費の支払いを約束してくれるものになっているからだ。

 私たちが、病気やケガをして病院や診療所を受診したとき、窓口で支払っているのは、医療費の全額ではなく、かかった費用の一部だけだ。この一部負担金の割合は、年齢や所得に応じて決められている。現在は、未就学児は2割、小学生~70歳未満の人は3割、70~74歳の人は2割、75歳以上の人は1割となっている(ただし、70歳以上でも現役並み所得の人は3割。2022年10月から75歳以上で所得が一定以上の人は2割になる)。

 そして、残りの7~9割の費用を負担しているのが、患者が加入している健康保険組合だ。

 病院や診療所は、社会保険診療報酬支払基金や、国民健康保険団体連合会といった医療費の審査・支払機関を通じて、患者が加入している健康保険組合に、残りの7~9割の医療費を請求している。病院や診療所を受診した際に、窓口で健康保険証の提示を求められるのは、医療費の請求先である健康保険組合を確認するためだ。患者が健康保険証を持っていないと、医療機関は医療費の請求先を確認することができない。

 そのため、健康保険証を持たずに医療機関を受診すると、医療費の全額が患者に請求されることになる。風邪など、ちょっとした病気なら、医療費の全額を支払っても数千円程度だが、大きな病気やケガの場合は負担も大きくなる。

 例えば旅先で病気になったり、突然の事故にあったりした場合はどうなるのだろうか。政府はこの6月にもGoToトラベルなどの観光促進策を再開することを検討している。これまで出かけるのを我慢していた分、キャンペーンの再開後は旅行に行く人も多くなるだろう。今回は「旅行先での保険証非携帯での受診」について見ていこう。

●旅先で保険証を持たずに自費受診しても、所定の手続きをすれば返金される
●子どもの医療費助成の自己負担分についても後から返金手続きが可能