日本政府、巨額債務を問題視せずPhoto:SOPA Images/gettyimages

【東京】岸田文雄首相が7日決定した経済財政運営の基本指針「骨太の方針」には、重要な期限が欠落している。

 岸田首相は、2025年までに国と地方の基礎的財政収支(PB)を黒字化するという、それまで政府が明示していた公約を削除した。さらに、政府が債務削減のために何らかの政策対応を行う期限を示さない一方、防衛費の大幅な増額を約束した。

 日本の政府債務残高が1100兆円超と国内総生産(GDP)の2倍を超えていることを考えれば、これは大胆な政策スタンスだ。財政健全化目標の達成期限の削除は、与党・自由民主党内のある陣営の影響力を見せつけた。この陣営は、「ロナルド・レーガン元米大統領は赤字が問題ではないことを証明した」というディック・チェイニー元副大統領の見解を受け入れてきた。

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の中で多くの国が債務を大幅に増やした後、債務削減に取り組む時期に来ているのかどうかについて世界的な議論が行われている。日本の経験は他国にとって教訓となるだろう。日本は先進国で最大の政府債務を抱えているとともに、与党内の有力陣営が、債務に関する世界の認識には欠陥があると主張しているからだ。

 安倍晋三元首相が率いるこの陣営は、日本には支出を大幅に拡大する余地があり、中国に対抗するための防衛費もその対象になると主張する。これに対して論陣を張るのは財務次官で、日本をタイタニック号に例え、巨大な債務の氷山に向かって突進していると警告する。