1970年代に米国でインフレが制御不能に陥った要因の1つとして、政策担当者がその原因について強力な企業と労働組合といった異端の理論を掲げていたことが挙げられる。こうした傾向は、反トラスト法(日本の独占禁止法に相当)の執行徹底や法人増税、国内での生産拡大を通じてインフレ退治を狙うジョー・バイデン大統領の計画にもみてとれる。これらの要素はインフレがなぜ8%を超える水準まで跳ね上がったのかを説明するものではなく、問題を解決できる見込みも薄い。仮にバイデン氏がインフレに関して最終決定権を持っているとすれば、米国が1970年代と同じ轍(てつ)を踏みかねないとの懸念が生じるかもしれない。だが、最終決定権を持っているのはバイデン氏ではなく、米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長だ。しかも、バイデン氏は先週、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)への寄稿で、パウエル氏が利上げとインフレ抑制に取り組む中でFRBには干渉しないと述べ、まさにその点を明確にした。