2000年8月、厚生労働省から労働者に対して、ココロの健康対策を立てるよう会社側に求める指針が出されました。その時示されたのが「4つのケア」です。

 では、その4つのケアについて説明しましょう。

(1)セルフケア

 従業員一人ひとりが自らココロと体の健康管理ができるよう、講習などを行なって知識を身につけさせます。ストレスに気づき、自分自身でコントロールできるようにするのです。

 従業員に「ココロをケアしなさい」と言うだけでは、何をすればよいかわからないし、「仕事で忙しくてそんな余計なことをしている時間はない」と考える従業員は多いのです。

 そのため会社はふだんの仕事を一時ストップさせて、研修のように制度としてココロのケアを学んでもらうようにします。

(2)管理職によるケア

 社内で人を管理・監督する人を「ラインケアマン」と言います。わかりやすく言えば、役付きの人、つまり管理職です。管理職は、部下の顔色をよく見て、体やココロに悩みを抱えているようであれば、トラブルになる前に未然に防ぐ必要があります。その技術を、管理職のみなさんに学んでもらうのです。

 かつて、ある広告代理店を舞台にした、社員の自殺過労死をめぐる労災訴訟があったのをおぼえている方は多いと思います。

 上司が部下の不調(異常)に気づかず、その部下が自殺してしまえば、上司と会社の重大な責任です。実際、アメリカなどでは、部下が精神疾患を悪化させれば上司の評価は下がるのは当たり前と考えられているのです(この点で日本は大きく遅れています)。

 私は、さまざまな企業や団体で働く人に、ココロのケアに関する講習会をしていますが、最近はこのラインケアマン(管理・監督者)を対象にした講習が多くなっています。そこで感じるのは、ラインケアマン自身、とても疲れているということです。リストラなどでスタッフの数が減り、管理職の負担も増えていますし、会社の利益を追求するために、ときには理不尽なことも受け入れなければならないからでしょう。

 そのため、まずラインケアマンに元気になってもらって、その次に部下を管理する技術を身につけていただきます。管理職自身が、ココロや体の大切さを実感できれば、職場の環境はかなりよくなるはずです。