全国9割以上の店舗で
販売停止の違反行為

 そもそもおとり広告とは、公取委の告示によれば、次の4つと規定されている。

(1)取引の申出に係る商品又は役務について、取引を行うための準備がなされていない場合その他実際には取引に応じることができない場合のその商品又は役務についての表示

(2)取引の申出に係る商品又は役務の供給量が著しく限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明りょうに記載されていない場合のその商品又は役務についての表示

(3)取引の申出に係る商品又は役務の供給期間、供給の相手方又は顧客一人当たりの供給量が限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明りょうに記載されていない場合のその商品又は役務についての表示

(4)取引の申出に係る商品又は役務について、合理的理由がないのに取引の成立を妨げる行為が行われる場合その他実際には取引する意思がない場合のその商品又は役務についての表示

 上記の(4)に「実際には取引する意思がない場合(の広告)」がある。ある商品を販売する日(あるいは時間)を広告に掲載しているにもかかわらず、初めから掲載した商品を販売するつもりがなかった場合は違反となる。

 公取委が指摘したスシローの違反行為の一つがこれである。

 スシローが昨秋に実施したキャンペーンの中で「新物!濃厚うに包み」(期間は21年9月8日~20日)と「とやま鮨し人考案新物うに 鮨し人流3種盛」(期間は21年9月8日~10月3日)の2商品について、「新物!濃厚うに包み」は21年9月14日~17日までの4日間、「とやま鮨し人考案新物うに 鮨し人流3種盛」は21年9月18日~20日までの3日間、スシローは、どちらも販売を終日停止することを21年9月13日に決定し、各店舗の店長等に周知していた。販売停止を決めていた(販売する意思がなかった)にもかかわらず、消費者には通知していなかったのだ。

 スシローは、自社のウェブサイトだけでなく地上波でのテレビコマーシャルもしている。サイトやCMで中止が告知されていないので、多くの消費者が中止されていることを知らずに、ウニを目当てに店舗を訪れていた可能性がある。まさに、ウニをおとりに集客していたことになるのだ。

 販売停止の決定により、終日提供しなかった日がある店舗が「新物!濃厚うに包み」は583店舗、「とやま鮨し人考案新物うに 鮨し人流3種盛」は540店舗もあった。おとり広告は、1店舗であろうと、違反行為が1日間だけであっても違反となる。だが、スシローは全国594店舗(当時)の大半で違反行為を行っていたのである。