仕事の傍ら大学院で学び
武器となる知財確立を推進
続けてカビを使った試験でも、MD処理をしたステンレス基材表面上ではカビの増殖を抑制。インフルエンザウイルスを用いた抗ウイルス性能評価試験でもウイルス感染価が最大80%減という結果を得る。さらに、新型コロナウイルスにおいても、未処理の場合と比較し90%以上のウイルス感染価の減少が確認された。抗ウイルスをうたうためには99%の減少率が必須だが、「コーティングでもなく薬剤も使用しない形状による物理的作用のため、薬剤耐性のある細菌やウイルスが現れる心配がないのもポイントです」と西谷氏。細菌・カビ・ウイルスの増殖を抑制する画期的な表面処理技術として、既に多くの企業から引き合いが来ている。
●株式会社サーフテクノロジー 事業内容/食品、医薬品、化粧品分野での機能性向上のためのマイクロディンプル処理の受託加工、従業員数/7人、売上高/1億2000万円(2021年度)、所在地/神奈川県相模原市南区大野台4-1-83、電話/042-707-0618、URL/microdimple.co.jp
ただし、抗菌メカニズムについてはまだ不明。メカニズムの解明とさらなる耐性アップを究めるべく、西谷氏は、22年4月より、かねてから共同研究を実践し、バイオミメティクスの先進的研究が進む関西大学のドクターコースに入学した。仕事の傍ら、「3年間、学術的見地から研究を進め、自社技術を重要な知財として確立し、少しでも世の中に貢献したいですね」と意気込む。
ちなみに今回の取材は西谷氏がメイン。その背景には下平氏が目指す「社長が不在でも、社員が主体となって持続的に成長していく企業をつくっていく」という思いがある。中小企業ながら人材育成に積極的に投資をするのも、それ故だ。
食品業界では国が定めるHACCP(安全性の向上・品質管理基準)に沿った衛生管理が義務付けられ、薬剤耐性菌や新たなウイルスの脅威も懸念される。同社の新たな発明・研究に期待したい。
(「しんきん経営情報」2022年7月号掲載、協力/城南信用金庫)