東京入国管理局,東京出入国在留管理局Photo:PIXTA

 病死・餓死・自殺が相次ぐ入管の過酷な実態、時給400円の縫製工場、戦前の「特高警察」の流れをくむ暴力、繰り返される実習生への性的虐待、ネット上にあふれる偏見と嘲笑の視線……。日本は外国人を社会の一員として認識したことがあったのか――。

 日本社会が内側に抱える「差別意識」の正体に迫った『外国人差別の現場』(朝日新書、安田浩一・安田菜津紀著)。著者でジャーナリストの安田浩一氏が、この国の政策に翻弄され、強制退去や入管収容の恐怖に脅える在日外国人の現実を描いた「あとがき」から一部抜粋してお届けします。

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 木漏れ日が揺れる。新緑が映える。

 休日の公園。芝生の上でボール遊びに興じる子どもたちを横目に見ながら、恒例の“青空教室”が始まった。

 この日の出席者は8人だ。学生、会社員、そして私のようなライターや写真家も。職業も性別も年代もバラバラな人たちが、公園の一角、日差しを遮る東(あずま)屋やのベンチに腰掛けた。

「ムボテ!」(こんにちは)。まずは挨拶から。この日が初参加で“新入生”の私も皆にならって唱和する。

 こうして恒例のリンガラ語レッスンが始まった。

 先生を務めるのは――コンゴ民主共和国出身の通称ジャックさん(43)。リンガラ語はコンゴで使われる地域語のひとつである。