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「人間の本質を、どれだけ生肌で、生身の感覚で大切に紡げるか。それが、自分にとっての勝負」(ロフトワーク・林千晶)――古川享が聞き出す 今を駆けるスマート・ウーマンの本音

林 正愛 [アマプロ株式会社社長]
【第7回】 2013年1月17日
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 そこでがっくりきているときに、大川さんに「ところで古川さん、ネグロポンテはん(ニコラス・ネグロポンテ:MITメディアラボの創設者)って知っているか」と聞かれて、「直接は会ったことはないけれど業績は知っています」と言ったら、メディアラボってどうなんや、と。こうこうこうでインターネットに対する取組みと子どもさんのコンピュータ活用を支援されるのであれば、そこは間違いない、と言ったら、秘書に「先週儲かったお金、そこに振り込んで」と言っていました。いくら振り込んだのか聞いたら「44億円」。

 何に対してお金を投資するのか、は重要な視点ですよね。

:はい。とくに今のように企業にお金が潤沢にあるわけではない状況では、とても重要だと思います。

封印した「人のために」を、クリエイティブ・コモンズで実現

古川:クリエイティブ・コモンズ(以下CC)についても教えていただけますか。どうして関わるようになったのでしょう。

:2000年に、ロフトワークでクリエイターの画像をウェブで扱うことを始めてから、不正利用対策をどうするかは考えていました。でも盗用されるかも、ということを前提に、画像に透かしを入れたり、コピーできないようにFlashでしか見られないようにすることには違和感がありました。

 悪用するかもしれない人は全体の1%にも至らないはずなのに、1%のリスクのために99%の人たちにとって使いづらくしたり、アンハッピーにすることは嫌でした。99%の良き利用者のためのプラットフォームとして、1%の不正行為でどれだけダメージがあるかを考えたときに、よくある画像複製防止の方法は費用もかかる上に、誰もハッピーにならないなと思いました。

 どの対策もピンとこないなと悩んでいた時に知ったのがCCでした。

 CCは悪用されることを防ぐ仕組みではなく、善意で使う人たちを応援する仕組みです。もっとみんな自由に使っていいよ、というのを合法でシェアするためのルールです。だから悪用を防ぐための対策はとられていません。CCのプラットフォームは、「このクリエイティブはすごい」「共有してくれてありがとう」という作り手への感謝の気持ちで成立していて、それが世界を巻き込むムーブメントになっている。それが感動的で、ロフトワークに入れるにはこれしかないと思いました。

古川:それでCCを。

:そうです。ちなみに私はオウム真理教のサリン事件を実体験した世代です。大学時代はキャンパス内でオウム真理教への勧誘もありましたし、社会人2年目に地下鉄サリン事件があって、私の会社の人で巻き込まれた人もいました。

 そんなひどい事件を起こしたのに、最初オウム真理教に対して強い嫌悪感は生まれなかった。むしろ「社会を良くしたい」という善良な気持ちも、ちゃんとコントロールしないと殺人をも厭わない活動に至ってしまうんだなと、驚きをもって見ていました。

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林 正愛
[アマプロ株式会社社長]

りん・じょんえ/BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ、ファイナンシャルプランナー、英検1級、TOEIC955点。津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業。British Airwaysに入社し、客室乗務員として成田―ロンドン間を乗務。その後中央経済社、日本経済新聞社にて、経営、経済関連の書籍の企画および編集を行う。2006年10月にアマプロ株式会社を設立。仕事を通じて培ってきたコミュニケーション力や編集力を活かして、企業の情報発信をサポートするために奔走している。
企業の経営層とのインタビューを数多くこなし、その数は100名以上に達する。その中からリーダーの行動変革に興味を持ち、アメリカでエグセクティブコーチングの第一人者で、GEやフォードなどの社長のコーチングを行ったマーシャル・ゴールドスミス氏にコーチングを学ぶ。現在は経営層のコーチングも行う。コミュニケーションのプロフェッショナルが集まった国際団体、IABC(International Association of Business Communicators) のジャパンチャプターの理事も務める。2012年4月から慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科で学んでいる。2児の母。

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日本経済の屋台骨を支えてきた製造業が苦しむ中で、さまざまな技術革新が生まれ、グローバル競争の新たな舞台となっているIT業界。いまやあらゆるビジネスがITを抜きにしては、競争力が立ちいかないのが現状だ。男性のイメージが強いIT業界で、実は多くの女性たちが活躍している。IT業界やそれに関わる仕事をして活躍している女性たちに焦点を当てながら、新しい競争の時代のリーダー像を紹介していく。
 

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