ハーバードビジネススクールのアシュリー・ウィランズ助教授は、日本のバイオベンチャー企業Spiberの報酬制度を取り上げた教材を執筆した。同社は、「社員が自らの給与を自分で決定する」というユニークな制度を導入している。ハーバードの学生の間でも賛否両論を巻き起こしたという斬新な制度から学べることとは。(聞き手/作家・コンサルタント 佐藤智恵)
ハーバードが注目!日本のベンチャー企業が導入した
「自分の給与を自分で決める」制度の三つの狙い
佐藤智恵 日本のバイオベンチャー企業Spiber(以下、スパイバー)の報酬制度に注目した教材「Social Salary Setting at Spiber」が、ハーバードビジネススクールの学生の間で話題となっています。この教材を執筆した動機は何ですか。
アシュリー・ウィランズ 数年前にハーバードビジネススクール日本リサーチ・センターを通じて、スパイバーが画期的な報酬制度を導入していることを初めて知りました。その制度とは、「一人ひとりが自ら給与額を決定し、その額を社内で公開する」というもの。つまり、自分の給与額を算定理由とともに申告し、同僚からフィードバックをもらった上で、最終金額を自分で決定する制度です。
私は報酬制度と社員の幸福度の相関関係を専門に研究しているので、トマト加工会社の米モーニング・スターなどの事例※については知っていましたが、日本企業がこのような実験的な報酬制度を採用している点に特に関心を持ちました。そこで早速、山形県鶴岡市にあるスパイバーの本社を訪問し、役員や社員の方々を取材することにしたのです。
編集部注※
マネジャーがおらず、階層がない、社員の自主性を重視したユニークな会社組織を運営することで知られる。社員の報酬は、同僚の評価によって決まる仕組みを採用。
佐藤 そもそも、なぜスパイバーの経営陣は「自分の給与額を自分で決める」という報酬制度を導入することにしたのでしょうか。