共同創業者との金銭トラブルを避けるため
最悪の事態を想定すべし

 筆者が特に気掛かりなのは、「Iさんは出資金が出せないため、元同僚が負担してくれる」という記載です。縁起でもないと怒られそうですが、もし経営がうまく行かずに塾を解散・清算した場合、元同僚は出資金の戻りが「0円」になっても良いと了承していますか?

 複数人で起業する場合は、最悪の事態を想定して、出資金の戻りといった細かな点まで決めておくことを強く勧めます。そうしないと、後々になってトラブルの原因になります。

 他にも、解散・清算時に借金が残った場合の負担割合も決めておいた方が良いでしょう。Iさんはそもそも開業時に出資しておらず、回収額も0円になるため、出資金の戻りで借金を相殺できません。Iさんが背負う借金が元同僚よりも多くなる恐れもあります。

 その際、Iさんは借金を返済できるのでしょうか。言い出しにくいことかもしれませんが、そうした細かなところまで予測し、開業前に元同僚としっかり話し合っておくべきです。

 もう一つ気になるのですが、生徒を指導する教室や机や椅子、その他備品などは借りるのでしょうか。それとも購入するのでしょうか。

 いずれの場合も、Iさんの保有資産を踏まえると、レンタル料または購入代金を元同僚の出資金で賄うと思われます。そのため、開業早々、出資金から一定の支出があることを覚悟しておいた方がいいでしょう。

 そして、塾経営が順調に進んだとしても、元同僚が出資金を全額出すことから、独立開業後の2人の収入には傾斜を付けた方がいいかもしれません。

 折半出資ならば年収を同額にできたでしょうが、実際は元同僚に“おんぶに抱っこ”の状況です。その事実を踏まえて、塾を始めてから給料面でトラブルが起きないよう、収入の割合も開業前にしっかりと決めておくべきです。

 ちなみに、筆者もIさんのように2人で開業しました。その際は「出資金は折半」「お互いに出資金が戻らなくても構わない」という約束を交わしています。