イーロン・マスクが目指す
ゴールは「自動運転」

 イーロンのモノづくりの特徴の二つ目は、「自動運転」だ。 

 テスラのEVが目指すのは、ハンドルを人が握って運転するのではなく、AIが運転する完全自動運転である。現時点でテスラの自動運転はレベル2だが、イーロン・マスクはレベル5の完全自動運転を実現すべく開発現場の技術者たちにハッパをかけている。

 そこで重要なのがソフトウエアとハードウエアの融合だ。しかもそれをテスラの社内でやってのける。AIのソフトウエア開発からAIチップの設計までテスラは内製化している。詳しくは後述するが、テスラのモデル3のECU(電子制御ユニット)は、完全自動運転を見据えた設計となっている。

 一方、スペースXのロケットも“自動運転”、つまりロケットの場合は“自動操縦“だが、これを目指して開発をしてきた。2021年9月には宇宙船クルードラゴンが4人の民間人を地上約580㎞の宇宙に運び、3日間の宇宙滞在を成功させたが、これは自動操縦で行われていた。

 イーロンは、「火星に人類を移住させる」という目標を掲げて、スペースXを経営してきた。高度な訓練を受けたプロの宇宙飛行士ではなく、普通の人が火星に移住する。百万人単位で文明を作るのが目的だ。そのためには、普通の人が操縦できる宇宙ロケットが必要だ。

 EVもロケットも乗り物にかわりはない。誰でも乗れる乗り物のゴールは、自動運転だ。そして自動運転はシンプルな設計とも関係する。