これは解約だけでなく契約についても同じです。無駄と思われる手続きは省き、シンプルに契約ができ、最初の利用を開始できれば、顧客体験は良くなるはずです。IVRやウェブサイトなどでのサポートにおいては、企業側の視点だけでなく、顧客側の利便性という視点を取り入れていく必要があると思います。
「もうBOSEしか買わない」
顧客をとりこにするCXのつくり方
ここまで「悪い顧客体験」の話をしてきましたが、逆に個人的にとても良かったと感じる顧客体験についても紹介しましょう。
私はBOSEのイヤホンを使っているのですが、これが壊れてしまってメーカーのサポート窓口へ電話したことがあります。IVRを使っていたかどうかは記憶が定かではありませんが、ネットで完結するのではなく電話をする必要があり、つながるまで少し待たなければならなかったという点では、電力会社のケースと似ています。ところが、その後の対応で見られた「この電話口で全てを解決しよう」という姿勢は素晴らしいものでした。
イヤホンはAmazonで購入したと私は思っていたのですが、BOSEの方ではAmazonからの購入履歴が確認できなかったようです。しかし、こちらから状況を説明しているうちに、「では大丈夫です。保証期間内ですので、手続きを進めましょう」と言ってもらえました。
このときはまず故障の状況を説明して、トラブルシューティングの指示を受けて動作を試し、いったんは音が出るようになりました。しかし、その後しばらくして、また動作がおかしくなり、再度サポートへ電話することになります。当然、最初の担当者とは違う人に電話がつながったのですが、以前のサポート履歴がきちんと共有されていて、すぐに故障品と引き換えに新品が無料で送られてくることになりました。しかも「配送に1週間ほどかかる」と言われた新品は3日ほどで届けられました。