例えば、CASE技術の商用車展開に向けて、21年4月にトヨタ・日野自・いすゞによる合弁会社「CJPT(コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ)」が設立されている。目的は商用車の電動化のほかトラックの水素エンジンの実用化に向けた先進技術の共同開発だ。さらにこのCJPTにはトヨタ子会社のダイハツ工業と、トヨタと資本提携するスズキも参加しており、軽自動車から大型車に至るまで商用車トータルで協業を進めようとしている。

 こうした商用車業界の置かれた環境や、これまでの統合の歴史を踏まえれば、さらなる再編の可能性も予想されており、日野自の不正と業績悪化はその引き金を引き得る事象といえるのだ。

 日野自は、トヨタの子会社となった01年以降4人の社長をトヨタから送り込まれてきたが、17年に日野自生え抜きの下義生社長が抜てきされた。下体制では18年に独フォルクス・ワーゲン(VW)の商用車部門であるトレイトンと電動トラック開発で包括提携するなど、商用車でのCASE対応を積極的に進めた。

 下氏は21年に小木曽社長に譲り会長に就任したが、わずか1年で退任した。結果的に不正行為の責任を取った形である。今回、単独で会見を行った小木曽社長もトヨタでHVプリウスの開発に携わるなど乗用車開発でキャリアを積んだ実直な技術屋タイプであり、筆者が就任直後にインタビューした際には「商用車業界は、乗用車とは全く違うのでこれからしっかり掌握していきたい」と真摯に語っていた。

 満身創痍(そうい)の日野自が単独でこの危機を切り抜けられるのか。あるいは商用車業界再編に拍車をかけることになるのか。

 三菱自動車が燃費不正が広がった結果、業績不振に陥って16年に当時のカルロス・ゴーン率いる日産の傘下になったこともあり、日野自の動向を注視していかねばならない。

(佃モビリティ総研代表・NEXT MOBILITY主筆 佃 義夫)