豪雨被害は深刻だ。ここ5年を振り返ってみても、「平成29年7月九州北部豪雨」では久大本線の橋梁が流失し、復旧までに約1年を要した。また、日田彦山線は複数箇所で橋梁の損傷や土砂崩れなどの甚大な被害が発生。莫大な復旧費とその後の維持費を考慮すると鉄道としての復旧は困難と考えたJR九州は、沿線自治体の反対を押し切って、添田~夜明駅間のBRT(バス高速輸送システム)化に踏み切った(2023年開業予定)。

 271人もの死者・行方不明者を出した「平成30年7月豪雨」でも、筑豊本線、芸備線、木次線、高山本線など複数路線が被災。筑豊本線は翌年3月、芸備線は同10月にようやく運転を再開した。

 北陸新幹線長野新幹線車両センターの水没が記憶に新しい「令和元年東日本台風」では、水郡線袋田~常陸大子間の鉄橋が流失。また長野県のローカル私鉄、上田電鉄も千曲川の氾濫で橋梁が崩壊し、両区間は1年半後の2021年3月まで不通となった。

 翌年、九州や中部地方を襲った「令和2年7月豪雨」では熊本県を走る肥薩線、鹿児島本線、くま川鉄道湯前線などが大きな被害を受けた。湯前線は復旧工事が進んでいるが、全線での運転再開にはなお3~4年を要する見込みだ。

 さらに深刻なのは前年、前々年の豪雨でも被災していた肥薩線だ。この豪雨で全線にわたって甚大な被害を受け、今もなお八代~吉松間は運休したままだ。今年に入ってようやく復旧に向けた費用負担の議論が進みつつあるが、復旧のめどは全く立っていない。

 そして昨年、7月から9月にかけて各地で発生した豪雨では、久大本線杉河内~北山田間の橋梁が損傷し、一部区間で約1カ月運転を見合わせた。久大本線の豪雨被害は2012年、2017年、2020年と合わせ、この10年で4回目となった。