JR東日本は4月5日、ホームドアやエレベーターなど駅のバリアフリー化を加速するため、2023年3月から、首都圏の一部区間の鉄道運賃を一律10円値上げすると発表した。だが、それだけでは計画している整備費用を大きく下回るため、JR東日本は多額の自己負担を強いられることになりそうだ。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
鉄道駅バリアフリー化のため
JR東日本が10円の値上げへ
昨年12月に国土交通省が創設した、駅のエレベーターやホームドアなどバリアフリー化に必要な費用を運賃に上乗せし、利用者に薄く広い負担を求めることができる「鉄道駅バリアフリー料金制度」の導入に向けた動きが進んでいる。
JR東日本は4月5日、東京の電車特定区間のみを利用する旅客を対象に、普通旅客運賃はIC運賃、きっぷ運賃ともに10円、定期旅客運賃(通勤のみ)は1カ月280円、3カ月790円、6カ月1420円を2023年3月から上乗せする運賃改定を実施すると発表した。
同社は1日あたり利用者数3000人以上の駅ならびに2000人以上3000人未満の自治体の定める重点整備地区内の生活関連施設に位置付けられた駅のバリアフリー化を進めており、エレベーターやスロープなどによる段差解消は整備対象514駅中485駅(94.4%、2021年度末時点)、バリアフリートイレは497駅中475駅(95.6%、同)が完了している。
一方、ホームドアについては2032年度末までに東京圏在来線主要路線全駅(線区別で330駅)合計660番線に設置を予定しており、現時点では92駅計183番線が整備済みだ。JR東日本は新料金制度導入により、整備対象ホーム数を660番線から758番線に拡大(駅数は変更なし)し、かつ整備完了を1年前倒しできるとしている。
この他、東京メトロの山村明義社長が4月7日の会見で2023年春から同制度を導入する方針を示し、JR西日本の長谷川一明社長も4月15日の会見で導入に向けて検討中と説明した。