繰り返す被災で
復旧めぐる議論も

 同じような区間で災害が頻発するのは偶然ではない。歴史の古いローカル線は山間部を、河川を幾度も渡りながら縫うように進むため、土砂災害、河川氾濫の影響を受けやすい。自然災害の激甚化、頻発化により、復旧してもすぐに違う箇所が被災する繰り返しとなり、事業者の体力を奪うばかりか、運休の長期化で鉄道離れも加速しかねない。

 そうなると自然と浮上するのが、多額の費用をかけてまで復旧すべきかという議論だ。路線上のいずれか一カ所でも寸断されれば運転できなくなる鉄道より、道路がつながっている限り柔軟な運行が可能なバスの方が災害に強く、費用も安い。

 JR西日本は今年4月、利用の少ない17路線30線区の輸送密度(1キロあたりの1日平均利用者数)と収支を公表し、ローカル線のあり方を見直す考えを表明しているが、その中には2018年の豪雨被災時に当時の来島達夫社長が「激甚化する災害が多発するエリア。復旧するにせよ、どこまで対処できる強度にするのか協議が必要」(2018年7月24日付朝日新聞電子版)として単純な復旧に消極的な見解を示した芸備線、木次線、福塩線なども含まれている。

 JR東日本も7月28日、輸送密度が2000人/日を割る、単独では維持が困難な35路線66線区の収支状況を公表し、ローカル線のあり方を見直す方針を示していたばかりだった。今回の豪雨で甚大な被害を受けたのはいずれもこの66線区に当てはまる区間であり、それぞれの営業キロと輸送密度は以下の通りだ(いずれも2019年度)。

・奥羽本線(東能代~大館間)47.5キロ 1485人/日
・津軽線(中小国~三厩間)24.4キロ 107人/日
・磐越西線(喜多方~野沢間)25キロ 534人/日
・米坂線(今泉~小国間)35.3キロ 298人/日
・五能線(能代~深浦間)63キロ 309人/日
・五能線(深浦~五所川原間)58.8キロ 548人/日
・花輪線(鹿角花輪~大館間)37.2キロ 537人/日