人にも優しい“魅せる工場”を目指し生産現場のスマート化を推進ロボットを組み合わせ、組み立てや梱包作業の半自動化を実現。見学希望者が来て楽しめる“魅せる工場”の新設も見据える

 実際、工場に足を踏み入れると、若手女性社員が指示に沿って迷うことなく部品出しからはんだ付け、梱包など慣れた手つきで作業を進めていく様子が目に付く。「新人でも即戦力として活躍でき、『自分が作った製品』としてものづくりの醍醐味を味わいながら自然と責任感が養われるのもポイントです」(尾﨑氏)。ミスが減少し、タクトタイムの自動計算や、進捗管理の可視化も実現している。

 二つ目が人とロボットの協業だ。大手企業のような完全自動化を目指すスマートファクトリーではなく、ロットや作業負担、プロセス、コストに合わせロボットに任せる部分と、人間がやるべき作業の役割分担を工夫している。

自前で自動機や治具を開発
生産現場の改善に取り組む

 単純に汎用のロボット、自動機を導入しただけでは生産現場のスマート化は成功しない。「多関節ロボットを駆使し、業務フローや製品に合わせた半自動化の省力設備を作製するなど、設計やプログラミングに長けた社員によるカスタマイズを自前で実践しています」と尾﨑氏。

人にも優しい“魅せる工場”を目指し生産現場のスマート化を推進部品組み立ての負荷を軽減するような自前の治具も開発・製作
●サンオクト株式会社 事業内容/各種センサー製造、従業員数/95人、売上高/20億3500万円(2021年度)、所在地/滋賀県長浜市神照町678-1、電話/0749-65-2636、URL/sunoct.co.jp

 これも多くの製品について試作の段階から顧客に寄り添い、徹底して技術を磨き、改善に取り組んできた蓄積ゆえ。現場で働く社員の7割が女性という職場にあって、力が必要な組み立て作業に使う各種治具を開発するなど、日常的な作業改善にも積極的に取り組む。

 同社では、コロナ禍を機に20年、経営理念を新たに策定。さまざまな困難や問題にぶつかった際の道標として、大切にしたい価値観を考え抜いたという尾﨑氏。そこで生まれたのが「素敵な仲間と“造る”最高の笑顔~スマイルファクトリー~」。

「お客さまはもちろん、社員・家族、協力会社、地域社会が、共に笑顔になって誇れる存在でありたいという思いを込めています」と尾﨑氏。経営理念を基点に、社員から訪れる見学者までもが笑顔になれる、温かい“魅せる工場”を目指す同社。その新たな取り組みに期待したい。

(「しんきん経営情報」2022年9月号掲載、協力/長浜信用金庫