「洗脳」という言葉で全てをくくり、
「擁護」意見をバッシングする

 さらに、両者は「支持している者はもれなく洗脳されている」という批判ポイントも似ている。

 日本のマスコミはあまり報じないが、ロシアでは恐怖支配だけではなく、プーチン支持の国民もそれなりにいるし、ウクライナ侵攻をロシア系住人を守るための軍事行動だと支持している人もいる。もともと同じ国だったこともあって、ウクライナ国内の中にも、ロシア軍を歓迎している人もいる。

 こういう「旧ソ連諸国の複雑な価値観」を現在、日本では「洗脳」というザックリとした言葉で片付けてしまう。ロシア国民の洗脳状態を解くということが、ロシアへの経済制裁を強めなくてはいけないという主張の根拠ともなっている。

 つまり、経済制裁でロシア国内を貧しくさせれば、ロシア国民も「我々はプーチンにだまされていた」と悔い改めるようになると考えているわけだ。

 一方、旧統一教会の話では「マインドコントロール」という話がよく出る。被害を受けたという人ばかりがメディアに登場するが、教団の教えを心から信じて、自分から進んで献金をしながら満たされた心で生活をしているという信者もいる。が、それらはこの教団から洗脳を受けているという位置付けだ。

 ウクライナ侵攻を支持するロシア国民と同様に、旧統一教会からだまされた被害者であって、マインドコントロールを受けて、操られているというわけだ。

 だからこそ、こちらでも厳しい「制裁」が必要となる。つまり、カルト規制法や宗教法人として解散をさせることで、これらの人々の洗脳状態を解くということは絶対的に正しい。だから、ロシアへの経済制裁と同じように政府が責任をもってやるべきだーーというわけだ。

 そして、もうひとつ瓜二つなのが、「擁護」した人々へのバッシングだ。

 ロシアのウクライナ侵攻に関して、日本は欧米と一緒になって制裁をするよりも、「中立」の立場で戦争終結の仲介役を買って出るべきだというようなことを主張した人たちは「ロシア擁護」と批判をされた。旧統一教会擁護で叩かれている太田氏もそうだ。

 実は何を隠そう、筆者も当時「制裁より中立」という意見をこの連載で述べさせていただいた。

 もちろん、これらも「ロシア擁護」だと各方面からお叱りを頂戴した。初対面の人から、「記事を読みましたけど、あなたのような考えをする日本人がいるからロシアや中国が調子に乗るんです」と出会い頭にお説教もされたこともある。

 本稿で、このような考え方の是非を問うつもりはない。ただひとつ指摘したいのは、この当時のロシアやプーチン大統領に対する批判のトーンやパターンが、現在の旧統一教会へのそれと恐ろしいほど酷似しているということだ。その批判は一言にまとめるとこうなる。

「多くの人々が苦しめられている反社会的な国・団体であって、その中には洗脳されて無理やり従わされている人もいる。だから、こんな国・団体の言い分など耳を傾ける必要はなく、即刻厳しい制裁を下すべきだ」