「不動産クラウドファンディング」は
果たして相続税対策になるのか?

 このコラムでもたびたび触れているが、日本の相続財産は土地や家屋といった不動産が最多だ。親の実家を相続するケースが多いからだが、資産を不動産化する理由は他にもある。不動産の相続財産評価額は実勢価格より低い割合で算出できるので、預貯金などの現金資産より相続税の軽減が期待できる。

「不動産クラウドファンディング」にも、相続の際、不動産の財産評価が用いられ、相続税の低減が可能だ。ただし、「不動産クラウドファンディング」には「任意組合型」と「匿名組合型」があり、相続税対策には「任意組合型」の選択がポイントとなる。

●「任意組合型」と「匿名組合型」の違い

「任意組合型」の場合、複数の投資家が事業者に出資をして共同で事業を行う「任意組合契約」を締結する。業務の執行は事業者に委任するが、投資家は重要事項に関する決定権をはじめ、運用に対するさまざまな権限を有する。そのため、万が一、運用が失敗した場合、その損失を被るというリスクも生じる。

 そんな「任意組合型」が、なぜ相続税対策になるのかというと、不動産所有権があるため、不動産として財産評価されるからである。例えば、「相続税路線価」は公示地価の約80%が評価額の目安とされている。また、賃貸の敷地用に供されている宅地「貸家建付地」は約73~91%と、自用地より評価額が下がる。「任意組合型」で賃貸不動産に投資すれば、実質的には「貸家建付地」の評価となり、相続税も軽減できる。

 ただし、「任意組合型」は不動産所得、「匿名組合型」は雑所得として、いずれも確定申告が必要だ。事業者は所得税20%+復興特別所得税0.42%の源泉徴収を差し引いて分配金を支払う。所得額に応じた所得税率が20%より低い人ならば、確定申告することで払い過ぎた税金の還付を受けることも可能だ。

 なお、不動産クラウドファンディングには、「賃貸借型」というのもある。投資家が不動産を購入し、事業者と賃貸借契約を交わし、事業者にその不動産の運用を任せる契約方法だ。しかし、市場に対象となる物件がわずかなため、現状では一般の投資家による契約も少ないようである。

 不動産クラウドファンディングの魅力は、何といっても「少額から」「短・中期で」「ネットで完結して」投資できることだろう。しかし、繰り返しになるが、投資にはリターンもあれば、リスクもある。落とし穴にはまらないよう、メリットだけでなく、デメリットや注意点も承知しておくことが大切だ。