長老たちの呪縛から解放され
3選後へひた走る習近平総書記

 日米首脳とは対照的に、呪縛から解き放たれたのが中国の習近平総書記である。

 習近平総書記の3選が実現するかどうか注目される中国共産党大会が10月16日から開催されることになった。

 筆者は、大会の開催時期について、仮に11月にずれ込むようだと事前の党内調整がうまくいっておらず、習近平総書記の3選に黄信号がともるとみていたが、前回の2017年とほぼ同じ時期の開催で決着したことで、習近平総書記の3選は揺るがないものになったと考えている。

 それは、8月上旬から16日まで、中国・河北省のリゾート地で開催された北戴河会議を乗り切ったからである。

 北戴河会議とは、毎年夏、中国共産党の現役指導部や歴代の指導者、つまりは長老らが集い、政治の現状について非公式に意見を交換する会議だ。党大会が開かれる年の会議は、次期指導部の人事をめぐり権力闘争の場となるため、注目度ががぜん高くなる。

 北京からの情報によれば、会議では、中国経済の低迷、ロシア寄りの外交姿勢、ゼロコロナ政策に関する批判は出たものの、習近平総書記に「引退勧告」をするまでには至らず、事実上、3選が決まったとみられる。

 習近平総書記から見れば、長期政権への道を脅かしかねない長老たちの呪縛から解き放たれた格好だが、それをアシストしてしまったのが、アメリカ議会下院のナンシー・ペロシ議長の台湾訪問であった。

 8月2日、ペロシ氏が台湾を訪問したのを受けて、習近平総書記は北戴河に赴くのを見合わせ、台湾近海で軍事演習を実施することに傾注した。そして演習の全日程を終えた後北戴河入りし、「台湾統一は志半ばであり、もう1期続ける」と宣言したというのだ。