長老たちも、アメリカの台湾関与の姿勢と中国軍の大規模な軍事演習を見せつけられては「引退勧告」はしにくく、習近平総書記3選が固まったという話もある。

 北戴河会議が終わった8月16日、習近平は遼寧省錦州市にある遼瀋戦役革命記念館を訪問した。遼瀋戦は中国共産党と中国国民党による国共内戦の一つである。

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 筆者は、習近平総書記が、会議の後、最初にこの記念館を訪問したことについて、「自分こそが毛沢東路線の継承者であり、自分の代で必ず台湾統一を実現する」と誓ったものと受け止めている。

 習近平体制が続くとなれば、来年に首相を退く李克強氏(67)の後任人事や政治局常務委員の人事が焦点となるが、筆者は、次の首相には、経済通で人望も厚い胡春華副首相(59)、もしくは習近平総書記の忠臣で上海市党委書記の李強氏(63)が就任するとみている。

 このように、長老たちからの批判をかわし、したたかに自らを呪縛から解き放って、半永久政権への足場を固めている習近平総書記は“アジアの怪物”である。

 岸田政権やバイデン政権は、この先も、この“怪物”と対峙(たいじ)することになるが、2人の場合、その前に、それぞれが直面している呪縛をどうにかして乗り越えなければならない。これから数カ月が正念場となりそうだ。

(政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師 清水克彦)