マネー逆回転に需給バランス崩壊が迫る不動産
物価上昇と高齢化の人手不足に直面するゼネコン
一つ目は、マネーの逆回転だ。インフレ退治に向けて、米連邦準備制度理事会(FRB)は金利引き上げにまい進しており、米国債10年の利回りも上昇している。これにより、日本の不動産市況へ大量に流入してきた外資マネーは、逆回転する兆しを見せ始めている。マネーの逆回転は、好調だった不動産市況を冷やしかねない。
もう一つは、需給バランスの崩壊だ。コロナ禍をきっかけにリモートワークが浸透し、オフィスを縮小する動きも出始めた。そこへ23年と25年、都心を中心に大規模再開発プロジェクトによるオフィス大量供給が控える。これにより需給バランスが崩れ、オフィスの空室率は上昇、賃料は下落する見通し。収益悪化が懸念されるのだ。
これに対し、ゼネコン業界に迫る危機は物価上昇と建設労働者の高齢化だ。建設業界は55歳以上の就業者の割合が、他の業界に比べて約5%高い。ただでさえ若い人材が集まらない不人気な業界であり、このままだと人手不足は避けられない。物価上昇による資材価格の高騰、人手不足による労務費の増加は建設コストの上昇に直結する。
インフレ、金利上昇、景気後退の懸念――。ゼネコンと不動産を取り巻く環境には不透明感が漂う。今は“バブル崩壊前夜”である。