『週刊ダイヤモンド』10月1日号の第一特集は「沈むゼネコン 踊る不動産」です。東京オリンピックなどの建設ラッシュで絶好調だったゼネコン業界をインフレが襲い、業績を苦しめています。これに対し、金融緩和を追い風に不動産業界は好調を維持しています。このままゼネコン業界は沈み、不動産業界は踊り続けるのでしょうか。ゼネコンと不動産の業界に迫りつつある“バブル崩壊前夜”の今を追いました。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

建設ラッシュ一巡、デベロッパーに頭が上がらない
「請け負け」に再び陥ったゼネコン

Photo by Ryo Horiuchi

 ゼネコン大手は東京オリンピックなどの建設ラッシュにより過去最高益を更新し、わが世の春を謳歌していた。採算を重視した「選別受注」をちらつかせ、頭が上がらなかった“お客さま”である不動産デベロッパー大手にすら強気な姿勢を見せた。

 しかし今、ゼネコンと不動産デベロッパーの立場は逆転した。元に戻ったともいえる。

 建設ラッシュが一巡して再び受注競争が激化し、大手ゼネコンは大型プロジェクトを安値で受注するようになった。そして新型コロナウイルスの感染拡大に端を発した物価上昇に直面した。

 資材価格の高騰を価格転嫁できず、ゼネコンが不動産デベロッパーに頭が上がらない「請け負(ま)け」体質に再び陥ったのである。

 2022年3月期の通期決算では、不動産大手が軒並み増益だったのに対し、ゼネコン大手は軒並み減益。明暗がはっきり分かれた。

 不動産業界はゼネコンから主導権を再び取り戻した。しかし、一寸先は闇である。インフレにあえぐゼネコン業界とともに、共倒れするかもしれない。不動産業界には二つの危機が、忍び寄っているのだ。

 一つ目は、マネーの逆回転だ。インフレ退治に向けて、米連邦準備制度理事会(FRB)は金利引き上げにまい進しており、米国債10年の利回りも上昇している。これにより、日本の不動産市況へ大量に流入してきた外資マネーは、逆回転する兆しを見せ始めている。マネーの逆回転は、好調だった不動産市況を冷やしかねない。

 もう一つは、需給バランスの崩壊だ。コロナ禍をきっかけにリモートワークが浸透し、オフィスを縮小する動きも出始めた。そこへ23年と25年、都心を中心に大規模再開発プロジェクトによるオフィス大量供給が控える。これにより需給バランスが崩れ、オフィスの空室率は上昇、賃料は下落する見通し。収益悪化が懸念されるのだ。

 これに対し、ゼネコン業界に迫る危機は物価上昇と建設労働者の高齢化だ。建設業界は55歳以上の就業者の割合が、他の業界に比べて約5%高い。ただでさえ若い人材が集まらない不人気な業界であり、このままだと人手不足は避けられない。物価上昇による資材価格の高騰、人手不足による労務費の増加は建設コストの上昇に直結する。

 インフレ、金利上昇、景気後退の懸念――。ゼネコンと不動産を取り巻く環境には不透明感が漂う。今は“バブル崩壊前夜”である

建設・不動産・住宅メーカー334社
経営「危険度」ランキング

『週刊ダイヤモンド』10月1日号の第1特集は「沈むゼネコン 踊る不動産」です。新型コロナウイルスに端を発した物価上昇を巡り、インフレの影響をもろに受けて業績が沈んだゼネコン業界に対し、不動産業界は金融緩和を追い風に物価上昇をものともしない好業績を叩き出しました。

 そこで、建設業、不動産業、住宅メーカーの上場企業334社を対象にランキングを実施。経営指標をもとに分析し、「負け組」と「勝ち組」を炙り出しました。あなたが所属する会社、あなたが株主として応援する会社は果たして、負け組と勝ち組のどちらでしょうか。

 好調だからといって不動産業界は、インフレにあえいでいるゼネコン業界を笑ってはいられません。不動産業界にも“バブル崩壊前夜”が忍び寄っており、足元では異変が生じています。徹底取材を基にゼネコン業界、不動産業界に迫る危機を詳らかにしました。