犯罪容疑者のペットたちの世話をする弁護士

 犯罪容疑者にも動物好きはいる。基本的に犬猫は所有物扱いなので、留置所にいる飼い主とのやりとりは弁護人が間に入る。とある殺人事件の現場となった猫2匹の家庭の場合、飼い主の一人が加害者で、もう一人が被害者だった。つまり、どちらもいなくなってしまったのである。

 弁護人となった若い弁護士が、現場に通ってはトイレの世話と給餌給水をやっていた。それを見かねた猫好きの別の弁護士が、獣医師経由で私に相談してきた。猫たちは避妊手術済みのシニア猫で、幸いおとなしくていい子だった。かわいがられていた証拠だろう。

 裁判も刑期もいつまでかがわからないのと、容疑者である飼い主も猫たちをお願いしたいとの意向だったため、所有権放棄の書類に署名をもらい、猫たちはうちで引き取った。

子猫を飼い始める高齢者も

 飼育放棄や引き取り依頼の事例で多いのはこんなケースだ。

・ペット不可の賃貸で猫を飼っていたが、見つかって猫を手放すように言われた
・子どもが猫アレルギーを発症し、主治医に猫を手放すように言われた
・猫を保護したが先住猫がいるからうちでは飼えない
・自宅の敷地で野良猫が子どもを産んだ
・高齢の飼い主が亡くなった/入院した/施設に入った/認知症になった

 どの人も“猫を飼えない理由”を次々畳みかけてくる。それに対して「こうすればいいのでは」という対策を提案しても手放す意向は変わらず、会話は平行線で解決にはならない。

 飼育放棄で多いのが、高齢者のペットだ。80代から小さな子猫を飼い始めたケースが後を立たない。寂しさから猫を飼ってしまうのだろうか。

 高齢者ほど子猫を欲しがるという傾向があるそうだ。猫の寿命は意外と長く、近年では20〜25年くらい生きることが多いが、残された猫について考えている人には出会ったことがない。猫にお金を残した事例も、私のところでは今のところない。中には法定相続人が動物病院に「安楽死してほしい」と犬猫を連れて来るケースさえあった。